利上げ後の米経済はどうなる FRBに副議長人事で「圧力」
米連邦公開市場委員会(FOMC)が13、14日開かれ、利上げが決まった。
米国の失業率は既に5%を下回り、インフレ率は最近上昇して1・7%と2%に迫ってきている。このため、利上げしないと、半年か1年後には、失業率が下がらないままインフレに火がつきかねない状況であった。 いまのタイミングは、オバマ政権下ではあるが、次期大統領のトランプ氏に世間の関心が集中する「隙間」の時期だ。
このため、米連邦準備制度理事会(FRB)も政治的な動きに巻き込まれないで、自らの判断をしっかり下すことができる。これまでFRBが利上げを遅らせていたのは、クリントン氏を勝たせるためという批判があったので、この際すっきり利上げしたともいえる。 逆にいえば、この絶好のタイミングを逃すと、次回のFOMCは1月31日~2月1日となる。トランプ政権の門出に利上げというのは、あまりに政治的にまずいという判断もあったのだろう。
トランプ政権は、共和党が上院も下院も過半数を握っているため、伝統的な共和党政策をとるのであれば、かなりの部分で実現可能ではないか。大規模な公共投資は伝統的な共和党政策とはいえないが、8年間も政権から遠ざかっていた共和党が反対する理由もなく、実現する公算が大きい。
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ただし、放っておけば、金利高になる。となると、FRBは年2~3回の利上げペースを自然体で行う可能性があるだろう。もっとも、利上げといっても杓子(しゃくし)定規で行うのではなく、あくまで雇用環境を維持した上で、実体経済の動きを見ながら実施するということになりそうだ。これでレーガノミクスのような「強いドル」の再来かというと、さすがに早計に失する。
一方、金融政策の動きは見えてこない。財務長官に指名された金融大手ゴールドマン・サックスのスティーブン・ムニューチン氏も確固たる考えを示していない。ただ、トランプ氏は雇用重視であり、不動産業出身であるので、生来的に低金利を好む。さらに、ムニューチン氏と政権移行チームは、銀行監督担当のFRB副議長指名を急いでいる事情もある。 このポストは、2010年のドッド・フランク金融規制改革法で新設されたポストである。オバマ大統領が指名すべきだったが、まだ決まっていない。
これを共和党が問題視しており、FRB議長、副議長、理事の承認権を持つ上院銀行委員会は、大統領が銀行監督担当副議長を指名するまで他のFRB理事を承認しないとしており、FRBは理事2人が欠員となっている。これはFRBへのプレッシャーになっている。トランプ政権がこのプレッシャーを取り除けば、FRBはトランプ政権に好意的な行動をとるはずで、この意味からも、さらなる利上げは遅くなる可能性がある。 となると、当面、トランプ政権は積極財政と金融緩和になる可能性がある。これは、米国経済にとっては追い風になるはずだ。
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20161217/dms1612171000002-n1.htm
【管理人 補足記事&コメント】
東洋経済は、(1)経済規模が大きい、(2)先進国の中で一番成長率が高くしかも加速している、(3)雇用・賃金が明確に回復トレンドに乗っており需要回復の中心となる。これらが日本の景気動向、市場環境を考える際に、米国が決定的に重要となる理由だとしている。
米国経済は単独で世界経済の22.5パーセントを占める(GDP、2014年)。成長率については、IMFの予想に基づけば、先進国平均は新興国より低いものの何とか加速している。一方で新興国は、成長率は高いがアクセルから足を離し減速しており牽引力に欠ける。リーマンショックからの回復というトレンドの中で、雇用・賃金ひいては消費の回復、つまり需要回復のリーダー役となるのが米国となる可能性が高い。
2008年から10年までの間に、米国では870万人の雇用が失われた。その後、雇用は毎月20万人ずつ回復し、統計上では2014年4月に失われた分を取り戻した。2年半で失ったものを、4年半かけて元の水準に戻したという事だ。これが米国の失われた7年ということになる。だが、今のところ、賃金が増えても消費を増やさず貯蓄に回すことが一時的なのかがよくわからないという問題もある。ただ、米国の消費拡大が始まれば、ドル高、輸入増、日欧の輸出増加、生産国の製造業回復、資源国の活性化、世界需要の拡大の好循環を順次期待できるようになる。
従って、焦点は米国内の消費拡大がカギとなる。この部分は様子を見ないと何とも言い難いが、悪い方向ではないわけで、貯蓄と消費が半分と見ても、消費拡大となるわけで、日本にとっても追い風となる…。
米国の失業率は既に5%を下回り、インフレ率は最近上昇して1・7%と2%に迫ってきている。このため、利上げしないと、半年か1年後には、失業率が下がらないままインフレに火がつきかねない状況であった。 いまのタイミングは、オバマ政権下ではあるが、次期大統領のトランプ氏に世間の関心が集中する「隙間」の時期だ。
このため、米連邦準備制度理事会(FRB)も政治的な動きに巻き込まれないで、自らの判断をしっかり下すことができる。これまでFRBが利上げを遅らせていたのは、クリントン氏を勝たせるためという批判があったので、この際すっきり利上げしたともいえる。 逆にいえば、この絶好のタイミングを逃すと、次回のFOMCは1月31日~2月1日となる。トランプ政権の門出に利上げというのは、あまりに政治的にまずいという判断もあったのだろう。
トランプ政権は、共和党が上院も下院も過半数を握っているため、伝統的な共和党政策をとるのであれば、かなりの部分で実現可能ではないか。大規模な公共投資は伝統的な共和党政策とはいえないが、8年間も政権から遠ざかっていた共和党が反対する理由もなく、実現する公算が大きい。
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ただし、放っておけば、金利高になる。となると、FRBは年2~3回の利上げペースを自然体で行う可能性があるだろう。もっとも、利上げといっても杓子(しゃくし)定規で行うのではなく、あくまで雇用環境を維持した上で、実体経済の動きを見ながら実施するということになりそうだ。これでレーガノミクスのような「強いドル」の再来かというと、さすがに早計に失する。
一方、金融政策の動きは見えてこない。財務長官に指名された金融大手ゴールドマン・サックスのスティーブン・ムニューチン氏も確固たる考えを示していない。ただ、トランプ氏は雇用重視であり、不動産業出身であるので、生来的に低金利を好む。さらに、ムニューチン氏と政権移行チームは、銀行監督担当のFRB副議長指名を急いでいる事情もある。 このポストは、2010年のドッド・フランク金融規制改革法で新設されたポストである。オバマ大統領が指名すべきだったが、まだ決まっていない。
これを共和党が問題視しており、FRB議長、副議長、理事の承認権を持つ上院銀行委員会は、大統領が銀行監督担当副議長を指名するまで他のFRB理事を承認しないとしており、FRBは理事2人が欠員となっている。これはFRBへのプレッシャーになっている。トランプ政権がこのプレッシャーを取り除けば、FRBはトランプ政権に好意的な行動をとるはずで、この意味からも、さらなる利上げは遅くなる可能性がある。 となると、当面、トランプ政権は積極財政と金融緩和になる可能性がある。これは、米国経済にとっては追い風になるはずだ。
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20161217/dms1612171000002-n1.htm
【管理人 補足記事&コメント】
東洋経済は、(1)経済規模が大きい、(2)先進国の中で一番成長率が高くしかも加速している、(3)雇用・賃金が明確に回復トレンドに乗っており需要回復の中心となる。これらが日本の景気動向、市場環境を考える際に、米国が決定的に重要となる理由だとしている。
米国経済は単独で世界経済の22.5パーセントを占める(GDP、2014年)。成長率については、IMFの予想に基づけば、先進国平均は新興国より低いものの何とか加速している。一方で新興国は、成長率は高いがアクセルから足を離し減速しており牽引力に欠ける。リーマンショックからの回復というトレンドの中で、雇用・賃金ひいては消費の回復、つまり需要回復のリーダー役となるのが米国となる可能性が高い。
2008年から10年までの間に、米国では870万人の雇用が失われた。その後、雇用は毎月20万人ずつ回復し、統計上では2014年4月に失われた分を取り戻した。2年半で失ったものを、4年半かけて元の水準に戻したという事だ。これが米国の失われた7年ということになる。だが、今のところ、賃金が増えても消費を増やさず貯蓄に回すことが一時的なのかがよくわからないという問題もある。ただ、米国の消費拡大が始まれば、ドル高、輸入増、日欧の輸出増加、生産国の製造業回復、資源国の活性化、世界需要の拡大の好循環を順次期待できるようになる。
従って、焦点は米国内の消費拡大がカギとなる。この部分は様子を見ないと何とも言い難いが、悪い方向ではないわけで、貯蓄と消費が半分と見ても、消費拡大となるわけで、日本にとっても追い風となる…。
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