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異次元緩和の「もうひとつの限界」!

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筆者は金融緩和だけでインフレを醸成することは、現在の日本では困難だと考えている。日銀が大量に長期国債を購入し、バランスシートを膨らませても、長期金利の低下余地が限られるためである。

「マネーを増やせば、物価が上昇する」という貨幣数量説のロジックは、金利がプラスの世界であれば、筆者も支持する。プラス金利の世界では、マネタリーベースの増加は政策金利の低下を意味し、それがもたらす長期金利の低下や円安進展によって総需要が刺激され、需給ギャップが改善するため、インフレ率は多少なりとも上昇する。

しかし、ゼロ金利制約下では、貨幣数量説のロジックは成り立たない。特にオーバーナイト金利のみならず、長期金利までもが1%を割り込んだ日本では、日銀がいくら長期国債を購入して、マネタリーベースを増やしても、長期金利の低下や円安進展に必ずしもつながらないため、消費や設備投資を刺激する効果は乏しい。

民間の資金需要も増えないため、銀行融資は増えず、民間金融機関のバランスシートの総額も変わらない。日銀による長期国債の大量購入でマネタリーベースが増えても、民間金融機関から見れば、長期国債が準備預金に振り替わるだけとなる。景気刺激効果は限定的で、インフレ率もほとんど上昇しない。

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実は、さらに大きな問題がある。マネタリーベース・コントロールの実行可能性である。ここまでの議論は、日銀がマネタリーベースを増やしても、ゼロ金利制約の下では景気刺激効果は限定的で、インフレ醸成は困難というものであった。しかし、そもそもマネタリーベースを際限なく増やすことは可能なのだろうか。

長期国債の需給などにも大きく影響されるが、準備預金に対する民間金融機関の需要が飽和に近づいているため、いずれマネタリーベースを増やすことが困難になる可能性がある。2年以内に2%のインフレ達成が困難であるだけでなく、2年でマネタリーベースを2倍にするハードルもかなり高いのではないか。

<マネタリーベースを2倍にすることは可能か>

日銀は異次元緩和の導入に伴い、2012年末に138.5兆円だったマネタリーベースを年間60―70兆円増やし、13年末には200兆円、14年末には270兆円まで引き上げるとしている。そのための手段が長期国債の大量購入であり、保有残高が年間約50兆円に相当するペースで増加するよう買い入れるとしている。民間金融機関が日銀に長期国債を売却することで、準備預金が増加し、マネタリーベースが増えるというのが日銀の目論見である。しかし、再投資先を失う民間金融機関が長期国債の売却を躊躇(ちゅうちょ)し、準備預金の拡大が止まることはないのだろうか。

ちなみに、マネタリーベースは銀行券と日銀当座預金の二つに大別される。13年9月末において、銀行券は83.6兆円、日銀当座預金は97.4兆円(うち、準備預金は88.1兆円)、合計で185.6兆円(硬貨の4.6兆円を含む)だった。今年3月末から、日銀当座預金は39.3兆円増加したが、この間、銀行券はほとんど増えていない。

マネタリーベースを操作目標とするのなら、銀行券を増やしてもよさそうだが、そもそも銀行券需要はコントロールが難しい。さらに日本では、銀行券需要がすでに飽和した可能性があり、銀行券残高はここ数年、80兆円程度で頭打ち傾向となっている。金融危機が再発すれば、不確実性の高まりから銀行券需要は膨らむが、そうした事態が発生しなければ、これ以上拡大することはないと見られる。

このため、マネタリーベースを増やそうとすれば、準備預金を増加させるしか方法はない。ただ、銀行券需要が飽和したのと同様、準備預金に対する需要も無制限ではない。実際、12年9月頃から、日銀が固定金利オペを行っても札割れが生じているが、それは需要が限界に近づいたためと考えられる。

それでも、01年から06年の量的緩和に比べると、準備預金の水準は高いが、それは08年9月から付利が始まったためだと見られる。オーバーナイト金利と同水準の金利が得られるため、超過準備を保有するインセンティブが生まれた。そのことは、マネタリーベースの目標達成を貫徹するのなら、付利の引き上げが有効であることを意味する。しかし、それはオーバーナイト金利の引き上げや短期国債の金利上昇を意味するため、政策オプションとしてはあり得ない。

長期国債購入によるマネタリーベースの拡大策は、理論的に考えると、次のようになる。

日銀の大量購入によって、長期国債に対する超過需要が発生。同時に、準備預金に対する超過供給が発生する。超過準備が発生した段階で、決済手段の準備預金と貯蓄手段の短期国債は、金融機関にとって完全に代替的な資産となっているため、長期国債に対する超過需要と短期国債に対する超過供給が発生する。短期金利が相対的に上昇し、長期金利が相対的に低下すれば、需給はバランスする。

もし長期金利が低下を続ければ、短期金利上昇という荒唐無稽な状況を想定しなくても、それぞれの需給はバランスする。しかし、長期金利はすでに0.6%前後まで低下し、さらなる低下余地は限られる。付利を上げないのなら、長期金利が下限に達した段階で、準備預金への需要は飽和する。そこで、マネタリーベースの拡大も困難になる。

頭の体操をしてみよう。長期国債市場は、すでに日銀の買い手独占となっており、民間金融機関は半ば日銀のエージェントと化している。日銀が購入するから、日銀への転売を目的に、長期国債を入札している。現状では、日銀が望む通りの価格設定が可能である。

もし民間金融機関がフェアバリューと考える以上の高い価格で長期国債を日銀が買い上げれば、金融機関は長期国債を売却し、その対価として準備預金は積み上がる。これは、日銀が民間金融機関に補助金を提供すれば、マネタリーベースを増やすことが可能であることを意味している。

それでは、民間金融機関は際限なく長期国債の売却を続けるのか。確かに、高値で長期国債を売却すれば、民間の金融機関は一時的に利益を獲得することができるが、数年間の期間損益に影響が及ぶ。継続的に預金という負債を抱える以上、長期国債を売却した後、一定程度の利回りを確保できる再投資先がなければ、長期国債の売却には躊躇するだろう。

そうした再投資リスクまで考えた長期金利の下限が存在するはずである。限界的な資金コストは付利の0.1%ということになるが、再投資リスクなどの機会費用も加味すると、もう少し高い水準が長期金利の下限となるのかもしれない。

歴史的には、03年6月、13年4月に0.4%前後の10年国債金利が観測された。それが利益最大化行動に沿った動きだったと解釈すれば、0.4%前後が最も資金効率のよい金融機関の再投資リスクまで考慮した限界的な資金コストなのかもしれない。長期金利がその水準まで低下すれば、民間金融機関の長期国債の売却が滞り、マネタリーベースの拡大も限界に達する。

あるいはマネタリーベースの目標を達成するため、日銀は民間金融機関に補助金を与える形で、マイナスの長期金利まで購入していくだろうか。日銀が腹をくくり、マイナスの利回りで長期国債の購入を追求すれば、準備預金は増大を続けるかもしれない。そうなると、市場で取引される長期国債の利回りには相当な低下圧力が加わり、0.4%を下回る水準まで低下する可能性がある。

もちろん、民間金融機関が考える長期国債のフェアバリューは変動する。財政が悪化を続けるとマーケットが考えれば、長期国債価格のフェアバリューは低下する。その場合、日銀の購入価格が同じでも、民間金融機関は日銀に長期国債を喜んで売却し、準備預金は積み上がって行く。つまり、すんなりとマネタリーベースを増やすことができるケースは、民間金融機関がキャピタルロスを恐れ、日銀に長期国債を売却したがっている局面だろう。

<金融政策目標が変更される可能性は>

では、仮にマネタリーベースを増やすことができなくなれば日銀はどうするのか。まず、現実的ではない選択肢。付利を下回る金利で固定金利オペを大量に行えば、補助金を受け取る民間金融機関は喜んで入札に応じるため、準備預金を拡大させることができる。

もう一つの選択肢は、2年で2倍というマネタリーベースの操作目標を変更することである。金融政策が限界に達したのだから止むを得ないが、限界が広く認識される前に、目標が修正される可能性がある。筆者が想定しているのは、政治的要請から、操作目標だけでなく政策目標である2年以内に2%のインフレも同時に修正されるシナリオである。

14年4月の3ポイントの消費増税により、コアCPI(生鮮食品を除く消費者物価指数)は2ポイント上昇する。その際、円安などの影響で消費増税抜きのコアCPI前年比は1%強まで上昇しているため、消費増税の影響を加えるとコアCPI前年比は3%程度まで上昇する。

多くの人がデフレ脱却を論じる時、その意味するところは不況からの脱却で、実際には物価上昇を嫌っている。このため、14年度に日銀の想定通り、消費増税込みで3%程度の物価上昇が実現した暁には、物価高騰に対し、世論から強い反発が生じる可能性がある。政治もそれに追随するだろう。

さらに15年10月には2ポイントの消費増税が行われるが、日銀の見通し通り、15年度の消費増税抜きのインフレ率が1.9%まで上昇すると、13―15年度の累計で物価は7%弱も上昇する。そうした見通しが広がれば、日銀に政策目標の変更を迫る動きが政治的に広がるのではないだろうか。2年以内に2%という政策目標が変更されると、マネタリーベースを2年で2倍にする操作目標を維持する必要もなくなる。

ただ、政治介入で金融政策の目標が再び変更されることは、金融政策の独立性を損ない、コミットメントの問題から、将来の金融政策の有効性に多大な悪影響をもたらす。このため、目標修正は相当慎重に行わなければならない。

政策目標については、現在、2年以内に2%というリジットなオールドタイプのインフレーション・ターゲットが採用されている。先進各国が採用する一般的なフレキシブル・インフレーション・ターゲットに解釈を変更するのが妥当だろう。一方、操作目標については、どのような形に修正されるのか、予想は難しい。そもそもマネタリーベースを2年で2倍に増やすことと、2年以内に2%のインフレを達成することの間に理論的な整合性はなかった。

日銀としては、将来、デフレに舞い戻った際、金融緩和が不十分だったからという批判は何としても避けなければならない。組織としては、そのことが前執行部時代の最大の教訓だと思われる。このため、日銀自らが政策目標の未達を表明することは困難だが、強い政治的要請があれば、政策目標の変更や操作目標の変更を受け入れるのではないだろうか。

あるいは、日銀は十分にやったということを強く示すために、政治からの要請も簡単に受け入れず、独立性を盾に、消費増税抜きで2%のインフレをなお追求するというシナリオも考えられる。その可能性は高くはないが、ゼロでもないだろう。たとえば、効果はともあれマネタリーベースの増加を目指し、未踏の領域である株式や不動産といった実物資産の購入に手を染めるのだろうか。日銀が高値で購入すれば、民間金融機関は日銀への転売を目的に実物資産の購入を進めるだろう。マネタリーベースは増えるが、そうした事態はバブルの再来という悪夢以外の何物でもない。

*河野龍太郎氏は、BNPパリバ証券の経済調査本部長・チーフエコノミスト。横浜国立大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行し、大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)や第一生命経済研究所を経て、2000年より現職。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE99U05920131031?sp=true


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[ 2013年10月31日 15:30 ] カテゴリ:日本経済 | TB(0) | CM(0)
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