古き良き時代の終わり…!!
外資系企業、と言えば、何かとドライな印象が強いが、日本に長い間根付いている企業の場合、雇用環境も含めて意外にウェットな一面を持っていたりする。
日本IBM、という会社もかつてはそうだった。
元々お世辞にも“社員に優しい”会社とは言えなかったとは聞くところだし、メーカーとしての顔を捨て、システムソリューション主体の会社に転換を遂げてからは、よりその傾向は強くなっていたものの、それでも、「リストラ」をするにあたっては、日本流の“真綿で首を絞めるような迂遠な手口”が多用されることが多かったように思う。
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いずれにせよ、社員に職を失わせることに変わりはないし、退職に至る過程においては、むしろ「即解雇」以上のストレスをかける恐れすらあるこの手の手法を褒めるつもりなど、自分には毛頭ない。
だが、我が国での歴史の浅い外資系企業のように、ドラスチックに「解雇」を突き付けるわけでもなく、一応、“自主的な逃げ道”を残す、という迂遠な手法を取るあたりに、タダの“外資”ではない「日本IBM」らしさがあったのは確かだろう。
「中の人」から伝えられる様々なエピソードや、会社のトップに長年日本人が就いていた、といった事実と合わせて、興味深いカルチャーだなぁ・・・と自分は思っていた。
ところが、今春、56年ぶりに外国人社長が就任したことがそんなカルチャーを暗転させたのか、日経紙には実に寒々しい記事が掲載されている。
「日本IBMの人員削減を巡る動きが訴訟に発展している。最近、退社した元社員3人が10月15日、同社を相手取り解雇の無効と賃金の支払いを求めて東京地裁に提訴した。」
「原告の一人は『突然解雇されて戸惑っている。こういうことが続いていいのかと思い、裁判に踏み切った』と語った」
(日本経済新聞2012年11月28日付け朝刊・第11面)
さすが天下の日経(苦笑)だけあって、記事の大半は「マーティン・イエッター社長の経営改革への注目」に割かれており、むしろ“好意的”なトーンにすら見えるところもあるのだが、ここで紹介されている、
「今、起きていることは人員の新陳代謝だ。人が入れ替わることはどこの会社にもあることだ」(同上)
という社長発言を見ただけで、身震いがするような“ありえなさ”を自分は感じざるを得ない。
ちなみに、このニュースは、1か月前の「赤旗」でも既に取り上げられて話題になっていたネタで、そこには、いわゆる「ロックアウト型ピンポイント(指名)解雇」の生々しい実態が描かれている。
媒体が媒体だけに、ある程度差し引いて見るべきところもあるのかもしれないが、それでも、「解雇通告を先に突き付けて、即座に退職願いを書かない限り、即日執行」という事実が本当だとすれば、実に由々しき事態だと思う。
もし、赤旗の記事や、JMIUのサイトに書かれていることが8割方事実なら、今回提訴した元社員たちが勝訴する可能性は相当高いだろう、と自分は思っている。
いくら近年業績が低迷している、と言っても、会社が黒字を出していることに変わりはないわけで、その状況で単純な「解雇」を認めるほど、日本の裁判所は企業にとって物分かりの良い存在ではない。
ただ、当事者が妥協の余地なく争うことで、最終決着まで長期化する、というのが、この手の訴訟の宿命でもある。
会社側は、自らの判断の妥当性を証明するために、被解雇者の何年にもわたる「業績不良」の事実を丹念に立証しようとするだろうし、組合側も「ここが203高地」とばかりに死力を尽くして論陣を張り続けるだろうから、1年や2年では、到底上級審の判断にまでたどり着かないのは明白。
そして、職を失った状況でそんな長期戦に耐えられる社員が、そんなにいるはずもない、というのもまた事実であろう。
どんなに非難されても聞き流せるくらい腹を固めてしまえば「解雇したもの勝ち」となってしまうところに、今の法の限界がある。
まぁ、派手なリストラで一時的に業績を回復したとしても、この国で同じやり方を何年も続けていけるとは思えないし、あと何年もすれば、会社側が再びやり方を改めるか、あるいは、「日本IBM」という会社自体が消滅を余儀なくされるのではないか、と思うところではあるのだけれど、まずは目の前で正義が通じるのかどうかが大事。
この国の司法の良心が証明される瞬間が訪れることを、自分は期待するのみである。
(blogos.com)
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