韓国、利上げは実態見誤った?…半島有事勃発を見越し資本流出防ぐ思惑も
韓国銀行は6年5カ月ぶりの利上げを決めた。家計の負債が急増する副作用が出ているためとの解説もあるが、どのような背景や影響があるのか。そして朝鮮半島有事が起きた場合、韓国経済はどうなるのだろうか。韓国もインフレ目標政策を採用しており、2016~18年の目標は2%である。10月のインフレ率は、全品目の消費者物価対前年同月比で1・8%、価格変動の激しい農産物と石油を除いた指数で1・6%だった。そこで11月30日の金融政策決定会合で政策金利を0・25ポイント引き上げ。1・5%とした。
全品目のインフレ率の推移をみると、7月が2・2%、8月が2・6%、9月が2・1%とインフレ目標を上回っていた。しかし、農産物と石油を除いたものでは、それぞれ1・5%、1・4%、1・4%で、農産物と石油の変動によって全品目の指数が上振れしていたことがわかる。はっきりいって、インフレ目標の運営として、利上げするような状況ではなかった。それを裏付けるかのように、12月に入って公表された11月のインフレ率は、全品目のインフレ率で1・3%、農産物と石油を除いたもので1・4%だった。 これは、インフレ率の基調を見誤った金融政策の変更ではないかと筆者は思っている。
思い返せば、日本でも同じことがあった。06年3月の量的緩和解除である。その当時に公表されたインフレ率が0・5%程度であったが、実はこれは物価統計の上方バイアス(実際よりも高めになること)に基づくものであった。当時、総務省にいた筆者は竹中平蔵総務相を通じて、上方バイアスによって見かけ上はプラスだが、実際はマイナスの可能性もあることを指摘した。ところが、何が何でも金融引き締めに転じたい日銀は、量的緩和の解除に方向転換した。
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当時、政府・与党内でこの方向転換を誤りだというのは、竹中氏と中川秀直政調会長しかいなかった。政府内では与謝野馨経済財政担当相ら大勢は金融引き締め容認派だったので、日銀に対して政府から議決延期請求権の行使もできなかった。 その結果、筆者らの予想通りに、半年後から景気が悪くなった。しかも、上方バイアスが改訂された後、当時のインフレ率もマイナスだったことが判明した。 こうした時には、経済指標ではなく、別の思惑があるものだ。当時の日銀は何が何でも量的緩和を脱するという実績が欲しかったのだろう。
今回の韓国銀行の金融引き締めにもその匂いを感じる。経済データを虚心坦懐(たんかい)にみれば、金融引き締めのタイミングではない。しかし、朝鮮半島の緊張が高まる中で、もし有事になれば、韓国からの資本移動が怖い。これは、1997年のアジア通貨危機で韓国が国際通貨基金(IMF)管理になったことを彷彿(ほうふつ)させる。 特に、今の日韓関係を考えると、当時のような日本からの支援融資も期待できない。となると、今の時期に利上げして韓国からの資本移動を未然に防ぎたい欲求にかられても不思議ではないだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
http://www.zakzak.co.jp/
韓国中銀の李柱烈総裁は政策決定発表後の記者会見で、金融政策の目先の方向性についてガイダンスを示すことができるかとの質問に対して、コメントを拒否。経済成長とインフレの動向を注視し、追加利上げが必要かどうかを見極めたいと述べるにとどめた。中銀の発表によると、今回の利上げは6対1での決定となったという。政策決定後に中銀が公表した声明は、成長率が10月の予想を若干上回る可能性を指摘する一方、労働市場のぜい弱さなどに懸念を表明。特に、これまでの声明に盛り込まれていた、雇用情勢が改善との文言が今回は削除され、労働市場には「やや弱含みの兆候」が見られるとした。
韓国の政策金利のタイミングは難しい。家計負債を考慮すれば、様子をみてからとなる。ただいずれば政策金利は上げざる負えない。その時に不動産経済システムを構築しないと無理がある。やるべきことは多いが…。
全品目のインフレ率の推移をみると、7月が2・2%、8月が2・6%、9月が2・1%とインフレ目標を上回っていた。しかし、農産物と石油を除いたものでは、それぞれ1・5%、1・4%、1・4%で、農産物と石油の変動によって全品目の指数が上振れしていたことがわかる。はっきりいって、インフレ目標の運営として、利上げするような状況ではなかった。それを裏付けるかのように、12月に入って公表された11月のインフレ率は、全品目のインフレ率で1・3%、農産物と石油を除いたもので1・4%だった。 これは、インフレ率の基調を見誤った金融政策の変更ではないかと筆者は思っている。
思い返せば、日本でも同じことがあった。06年3月の量的緩和解除である。その当時に公表されたインフレ率が0・5%程度であったが、実はこれは物価統計の上方バイアス(実際よりも高めになること)に基づくものであった。当時、総務省にいた筆者は竹中平蔵総務相を通じて、上方バイアスによって見かけ上はプラスだが、実際はマイナスの可能性もあることを指摘した。ところが、何が何でも金融引き締めに転じたい日銀は、量的緩和の解除に方向転換した。
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当時、政府・与党内でこの方向転換を誤りだというのは、竹中氏と中川秀直政調会長しかいなかった。政府内では与謝野馨経済財政担当相ら大勢は金融引き締め容認派だったので、日銀に対して政府から議決延期請求権の行使もできなかった。 その結果、筆者らの予想通りに、半年後から景気が悪くなった。しかも、上方バイアスが改訂された後、当時のインフレ率もマイナスだったことが判明した。 こうした時には、経済指標ではなく、別の思惑があるものだ。当時の日銀は何が何でも量的緩和を脱するという実績が欲しかったのだろう。
今回の韓国銀行の金融引き締めにもその匂いを感じる。経済データを虚心坦懐(たんかい)にみれば、金融引き締めのタイミングではない。しかし、朝鮮半島の緊張が高まる中で、もし有事になれば、韓国からの資本移動が怖い。これは、1997年のアジア通貨危機で韓国が国際通貨基金(IMF)管理になったことを彷彿(ほうふつ)させる。 特に、今の日韓関係を考えると、当時のような日本からの支援融資も期待できない。となると、今の時期に利上げして韓国からの資本移動を未然に防ぎたい欲求にかられても不思議ではないだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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