消費増税、「GDP2%台以下でも実施を」が大半!
来春実施予定の消費増税をめぐり、政府が判断材料として重視している2013年4─6月期国内総生産(GDP)成長率が、市場予測を下回る2%台やそれ以下にとどまっても、予定通り断行すべきとの見方が、金融市場で圧倒的に多数を占めている──。こうした結果がロイター調査で明らかになった。
また、増税を実施しない場合、様々なところでリスクが高まるとの指摘も相次いだ。
もっとも、増税が延期されたり、引き上げ幅を縮小した場合でも、長期金利の大幅上昇を予想する声は少数で、市場関係者は財政再建の取り組みが遅れることに対し寛容だ。現段階で国債消化への懸念が小さいことや、財政規律への信頼が依然として失われていない点が背景となっている。
*調査の主要項目のグラフは下記のURLをクリックしてご参照ください。
http://mediacdn.reuters.com/media/jp/editorial/html/20130731tax.html
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この調査は7月29日─30日にかけて、金融市場関係者15名を対象に行った。回答者は以下の通り(回答到着順、敬称略)
JPモルガン証券チーフ債券ストラテジスト・山脇貴史、第一生命経済研究所主席エコノミスト・熊野英生、みずほ銀行マーケットエコノミスト・唐鎌大輔、みずほ総合研究所チーフエコノミスト・高田創、 野村證券チーフ為替ストラテジスト・池田雄之輔、農林中金総合研究所主席研究員・南武志、SMBC日興証券チーフ債券ストラテジスト・末澤豪謙、伊藤忠経済研究所主任研究員・丸山義正、明治安田生命チーフエコノミスト・小玉祐一、バークレイズ証券チーフエコノミスト・森田京平、
日本総合研究所主任研究員・河村小百合、シティグループ証券外国為替本部チーフFXストラテジスト・高島修、T&Dアセットマネジメントチーフエコノミスト・神谷 尚志、三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所 シニアエコノミスト・宮嵜浩、ニッセイ基礎研経済調査室長・斎藤太郎
<予定覆せば様々なリスク>
来春からの3%増税について、15人中14人が予定通り実施すべきと回答した。
マーケットには「財政状況は、市場金利次第で短期間のうちに安定的財政運営の継続が困難になりかねない切迫した状況にある」(河村氏)との共通した認識が存在している。
加えて「近い将来のデフレ脱却が視野に入ってきた」(宮嵜氏)という経済環境の改善が意識されている。
一方、税率を縮小して漸次引き上げとすべき、とただ一人回答した南氏は「デフレ脱却が未達成の経済への負担は大きい」として、デフレ脱却の達成を待つべきとの考えだ。
第3の矢まで放った安倍晋三政権にとって、第4の矢とも言われている財政再建への取り組みは「アベノミクスの改革色が本物かどうか試されている」(熊野氏)と見られている。
このため予定通りの実施が見送られた場合のリスクが数多く指摘され、「日銀が強力な国債買い入れを維持する正当性が損なわれるリスクがある」(池田氏)、「半ば国際公約化している」(末澤氏)と見られている財政再建へのコミットメントに対する不信を呼び、「G20などで円安容認姿勢が弱まる」(森田氏)といった点も指摘されている。
<4─6月GDP、2%台以下でも増税すべきが過半数>
政府は秋に増税を判断するため、足元の景気の総合的な判断指標となる2013年4─6月期の国内総生産(GDP)成長率を見極めたいとしている。
民間調査機関では年率3─4%程度の高成長を予測しているが、今回の調査では増税実施の条件として、予測に届かない3%未満の成長率になったとしても「増税すべき」との回答が、15人中12人を占めた。
また、「マイナス成長でもよい」とする回答を含め、0%台あるいは1%台でも良いとする回答は8人と過半数を占め、低成長であっても予定通り増税すべきとした。小玉氏は「日本の危機的財政状態を考えれば、何らかの前提条件をつけている時間的余裕はない」としている。
ただ、GDP成長率以外に考慮すべき条件として「海外経済の悪化により、日本が景気後退に陥るがい然性が高まった場合」(斉藤氏)を挙げる声が多く、特に中国と米国の景気動向に注目する声が多く出た。
「最も危険度が高いのが中国景気。グローバルに危機が広まるような兆候が出てくれば、いったん消費増税を先送りし、様子見することが必要になる可能性もある」(山脇氏)との指摘もある。
増税による景気下押し圧力に対し緩和策が必要との回答は9人、不要との回答は6人と分かれた。対策の中身についてはまちまちとなり、公共事業など需要創出や、耐久財への補助金による駆け込み反動を平準化する対応、成長戦略などが挙げられた。対策の財源としてをどこから捻出するか課題だが、高田氏は「法人税の増加分や不要資金などで数兆円の対応は可能」と見ている。
<延期や縮小でも金利大きく跳ねず>
増税は予定通りの実施が必要として、財政再建への取り組みを重要視しているにもかかわらず、回答者のほとんどは増税が延期・縮小されても、長期金利が大きく上昇することはないと見ている。代わりに具体的な歳出削減策が示されないとしても、15人中10人が「長期金利は小幅上昇」、3人が「さほど影響はない」、と回答し、大半が財政規律の緩みに寛容だ。
その背景には「日本は経常黒字国であり、国債の国内消化が可能である」(高島氏)など、国内投資家の買い支えを予想する声がある。
また「政府もさすがに先送りだけのゼロ回答とはせず、何らかの着地点を示すと期待している」(丸山氏)といった声もあるように、現段階では財政規律への信頼がつなぎとめられていることもある。
このため今回は先送りした場合に次に巡ってくる増税時期は、1年後が6人、2─5年先が5人となり、そう間を置かずに次の機会がくるとの見方が多い。
その一方、本来であれば「消費増税の前にやることがある。税の無駄使いや利権構造の修正、公務員改革、社会保障制度改革など歳出側の見直しはもっと必要」(神谷氏)という指摘も出ている。
また、仮に消費増税を見送るなら「社会保障費を削減する代替案を出すべき。増税も社会保障削減も嫌だという選択肢はありえない」(唐鎌氏)など、単なる増税撤回が許される経済情勢ではないという見方も出ている。
(ロイター)
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