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先進国のイノベーションが行き詰まる3つの理由

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ジュガード的なイノベーションは新興市場で多く見られるが、先進国にはわずかな例があるだけだ。1980年代のテレビシリーズ「冒険野郎マクガイバー」ではアメリカ人のジュガード精神――ヤンキーの独創性とも言われる――が人気を博したが、今日ではジュガードを実践している欧米企業はほとんどない。しかし、かつては欧米でも、ジュガードが大きな役割を果たした。産業革命時のアメリカなど、欧米諸国の経済成長を牽引したのは、柔軟な思考の持ち主であるジュガード的発明家たちだった。

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たとえば1831年、バージニア州の農夫サイラス・マコーミックは、独学で穀物の自動刈り取り機を作った。その刈り取り機は、腰に負担のかかる重労働から農夫を解放し、地域を困窮させていた食物の供給不足を解決に導いた。マコーミックが生まれた1809年は、アメリカ人の80%以上が農業で生計を立てていた(1970年にはわずか4%にまで減少)。19世紀初頭のアメリカでは、穀物の収穫は手作業で行われていたため、多くの労働力が必要だった。

サイラス・マコーミックの父は、仲間の農夫たちの生活をより楽にしたいと考え、28年間、自動刈り取り機の開発を試みたが、度重なる失敗の末にあきらめてしまった。息子のサイラスは22歳のときに父の発明を引き継ぎ、家の納屋を作業場として、何カ月もの間、限られた資金と手作りの部品を使って設計を修正した。1831年、ついに実用に耐える刈り取り機が完成した。この発明により旧式の農具で男5人が作業する以上の収穫が可能になった。

自動刈り取り機は、サイラスの最初の発明ではなかった。彼はほとんど教育を受けていなかったが、15歳のときには、穀物をより効率的に収穫できる軽量の農具を作っていた。その数年後には、2種類の新しい鋤すきを開発した。19世紀のアメリカでは、資金がなくても、チャンスはたくさんあった。そして、サイラス・マコーミックのようなジュガード精神を持つ人々がたくさんいて、彼らの優れた発明が社会に大きな恩恵をもたらしていたのである。

しかし、サイラス・マコーミックが発明した自動刈り取り機は、すぐに商業的成功を収めたわけではなかった。手作業に慣れていた仲間の農夫たちは、この見慣れない機械の利便性を信じなかったのだ。何年もの間、機械は売れなかった。そこでマコーミックは、またしてもジュガード的思考を働かせ、口コミという宣伝手法を思いついた。数少ない最初の顧客に頼んで、新たに顧客になってくれそうな人に勧めてもらったのである。

機械が徐々に売れるようになると、マコーミックは生産拠点をシカゴの工場に移した。機械は人気商品になり、アメリカ全土の農作業を劇的に向上させた。その過程で、マコーミックは多くの革新的な販売と広告手法の土台も築いた。たとえば顧客の弁済能力の査定や、「返金保証制度」の提案などである。いずれも現在の欧米諸国では、産業を問わず標準的な手法となっている。

マコーミックは、独創的技術を発明しただけでなく、ビジネスモデルの優れた改革者(イノベーター)でもあったのだ。工場の火事や特許紛争といった災難が続いても、いつもあきらめずに立ち直った。マコーミックのジュガード精神による発明は、多くのアメリカ人労働者を農作業から工場労働へと移行させ、産業革命を推進した。

アメリカにおける初期のジュガード・イノベーターの中で最もよく知られているのは、ベンジャミン・フランクリンだろう。フランクリンは9人の兄弟と7人の姉妹がいる清教徒の大家族に育ち、質素な暮らしから、倹約の徳を学んだ。わずか10歳で学校を辞め、家計を助けるために父親の経営するロウソクと石けんの店で働きはじめた。早くから、日々の問題を、限られた資源を使って金がかからない方法で解決していた。その伝説的とも言える独創性は、仲間である市民への純粋な共感から生まれたものだった。最も実用的な発明のひとつが「フランクリンストーブ」だ。18世紀のアメリカの家庭で使われていた暖炉はエネルギー効率が悪いうえ、木造の家では、火花が引火して火事になる危険性が高かった。

フランクリンは、この問題をジュガードで解決した。正面を囲いで覆い、背面に空気室を持つ新型ストーブを発明したのである。それによって効率性が高まり、薪の使用量を75%減少させて、2倍の熱を出すことに成功した。フランクリンストーブは「少ないものからより多く」を実現した。

フランクリンは、オープンソースの初期の提唱者でもある。ストーブを開発したのは利益を得るためではなく、人のためになりたかったからだと述べ、特許を取得しなかったのだ。フランクリンの望みは、自分の発明によってアメリカ人すべてに恩恵をもたらすことだった。実際、特許はひとつも取得していない。自伝には「他人の発明から大きな利益を得られるように、自分の発明が他者のためになる機会を喜ぶべきである。これは自由に気前よく行うべきことである」と書いている。いくつものジュガード的発明をしながらも、彼の発明はつねに万人に開放された。独創的でシンプルな発明品――避雷針、遠近両用メガネ、走行距離計など――は、入植地での生活を向上させた。

アメリカ建国の父たち、ベンジャミン・フランクリン、サイラス・マコーミック、ライト兄弟などは、19世紀から20世紀におけるジュガード実践者である。こうした独創的な起業家たちは、産業革命を推し進め、その後何十年にもわたって持続する経済大国としての強固な基盤を築いた。しかし20世紀、とりわけ第二次世界大戦後の経済の成熟によって脱工業化が進み、システム化された目新しさのない生活様式や仕事が当たり前になると、ジュガード精神は徐々に忘れられていった。

欧米はいかにジュガード精神を失ったか

20世紀の欧米企業は、経済の拡大に伴い、イノベーションを制度化しはじめ、その目的に特化した研究開発(R&D)部門を設置し、市場にアイデアを持ち込むのに必要なビジネスプロセスを標準化していった。他の事業活動と同じように、イノベーションも管理されるようになったのだ。創造プロセスが産業化されると、イノベーションは次のような要素を持つ体系化された手法へと変わっていった。すなわち、豊富な予算、標準化されたビジネスプロセス、知識の独占である。

こうしたイノベーション手法は、20世紀後半に欧米企業が大きな成功を収める一助となったが、変化が速く、不確実な21世紀には限界がある。あまりに多くの資金と資源を必要とし、柔軟性に欠け、排他的で、エリート主義的であるからだ。

体系的な手法はあまりに多くの資金と資源を必要とする

欧米の企業は、イノベーションとは、産業と同じように、インプット(資源)を多くすればアウトプット(発明)も多くなるものと信じてきた。その結果、イノベーションは体系的になり、多くの資本が必要になる。資金も天然資源もますます不足してきているにもかかわらず、両方を大量に使うのだ。いわば「より多くのものからより多く」を作り出す手法である。つまり消費者に高い代金を払わせて、オーバースペックの製品を、金をかけて開発、生産していることになるだろう。

たとえば、世界で最もイノベーションに投資した上位1000社――多くは欧米の企業――の研究開発費用を合計すると、2010年だけでも5500億ドルになる。この支出にはどれほどの見返りがあるのだろうか。ほとんどない、というのが経営コンサルティング会社ブーズ・アンド・カンパニーの答えである。同社の調査では、欧米でR&Dへの投資が最も大きい3つの業界――コンピューターおよび電子、医療、自動車――は、過剰な開発費にもかかわらず、画期的な新製品をなかなか創出することができずにいるという。R&Dの投資額とその成果(大きな利益を生む製品を開発し、販売できるかどうか)に相関関係はあまりないのである。金でイノベーションは買えない、と言っていいのかもしれない。ブーズ・アンド・カンパニーのある報告書には、しょげた顔つきのCEOが「R&Dに20ドルを使って、できたのはこのお粗末なシャツだけ」という文字が入ったTシャツを着ている写真が掲載されている。財政的制約に直面しながら、成長を求める株主からの圧力に晒されている欧米企業のトップの苦境をうまく表している。

医薬品業界でも「多いほど良い」というR&D戦略はうまくいっていないようだ。大手製薬会社の研究開発費は、1995年の150億ドルから2009年には450億ドルに増大している。一方、1年間に発表される新薬の数は、1997年から44%減っている。2011~16年に、1390億ドル相当の特許が失効する大手製薬会社にとっては、とくに悪いニュースである。さらに複雑なのは、5000万人もの国民が基礎的な健康保険に加入していない現状で、医療費が抑えきれないほど高騰しつづけているために、アメリカの大手製薬会社が、政治家や世論からやり玉に挙げられていることだ。

医薬品業界だけではない。アメリカの自動車産業も、2007年だけで160億ドルをR&Dに投資している。それでも、日本、韓国、ドイツ、さらに中国やインドの競合企業に追いつくことができない。世界の消費者は、よりコンパクトで、低燃費で、環境にやさしい車を求めているからだ。1998年に70%だったビッグ3――クライスラー、ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード――のアメリカ市場におけるシェアは、2009年には44.2%まで減少している。3社は2008八年12月には財政難に陥り、従業員の健康保険料を払い、倒産と大量解雇を防ぐために、340億ドルの支援を政府に求めた。2009年の12月以降、アメリカ政府は820億ドルの公的資金を投入し、そのうち620億ドルは、破産したGMとクライスラーの支援に使われている。

体系的な手法は柔軟性に欠ける

R&Dに巨額の費用を投じているせいで、欧米企業はリスクを避けたイノベーションを行う。「シックス・シグマ」(工程を標準化することで不良品発生の減少と業務の効率化を図る管理手法)や「ステージゲート分析」によってプロジェクトを管理し、統制しようとするのである。そうすることで、不確実性と失敗のリスクを徹底的に排除し、R&Dを実行と結果の両面において、より予測可能にしようというのだ。しかし、このように体系化された経営プロセスと方法論では、変化が速くて激しい世界で企業が必要とする柔軟な手法を獲得したり、差別化を達成したりすることはできない。

シックス・シグマを例に考えよう。この有名な経営戦略は、1986年にモトローラ社によって開発され、GEやボーイングなどフォーチュン500社に名を連ねる企業で取り入れられている。不良品の発生をなくすことで品質を向上する手法だ。統計的には、シックス・シグマを実践することで、99.99966%の製品に不良が起こらないとされる。同一化の追求においては多大な効果を発揮し、予測可能な環境で大量生産を行うには便利である。だが、シックス・シグマは、拘束衣のようなものだ。一度着たら最後、状況が変わっても身動きができない(もちろん、踊ることも)。

シックス・シグマのような、安定した予測可能なプロセスを中心にする改革プログラムは、企業が求める急激な変化を実現できない。企業が求めるのは製品やサービスのマス・カスタマイゼーションであり、ますます多様化し、好みがうるさくなる顧客を満足させることであり、テクノロジーの進歩についていくことだからだ。さらに悪いのは、典型的なシックス・シグマの文化は、「良い逸脱(ポジティブ・デビアンス)」を排除してしまうことだろう。ポジティブ・デビアンスとは、慣例にとらわれない独創的な方法を用いる先駆的な従業員が、従来のやり方では解決できない問題を解決する戦略のことである。マルコム・グラッドウェルが、著書『天才! 成功する人々の法則』で指摘するように、良い逸脱者とそのアイデアこそが市場をがらりと変えるイノベーションを引き起こすのだ。

3M(アーサー・フライが、まったくの偶然から今や欠かせないアイテムとなったポスト・イットを発明した)のCEOであるジョージ・バックリーが、シックス・シグマの取り組みを縮小させたのも、企業内で起こるイノベーションを復活させるためだった。バックリーは指摘する。「発明とは、本質的に無秩序なものだ。シックス・シグマを持ち込んで、さて、発明が遅れているから水曜日に良いアイデアを3つ、金曜日に2つ出そう、というわけにはいかない。創造性(クリエイティビティ)とはそういうものではない」

体系的な手法は、排他的でエリート主義的である

20世紀を通して、欧米企業が設立した大規模な研究開発機関は、きわめて優れた技術者や科学者を多数、雇用してきた。「知識は力である」と信じ、それを独占することが成功の鍵だと考えたからだ。イノベーションは数人の指導者たちによって管理されるエリートたちの活動となり、技術者と科学者は本社に近い研究室で、守秘義務を条件として働いた。選ばれたわずかな人々だけが、企業のR&D部門に招き入れられ、イノベーションを行うリソースと許可を与えられるのである。新たに得た知識は堅く守られる。社外はもちろん、社内の他の従業員との共同作業も好まれなかった。

画期的な新商品によって市場を支配するには、2つのものが必要だとされた。最上級の技術と、最良の知的財産である。どちらも十分な金を出せば手に入る。黎明期であれば、それも正しかったかもしれない。しかし、今は事情がまったく異なる。古くは、博士号を持つ者しか新しいものは考え出せないとされていたが、今日の消費者主導の経済では、技術を商品化することのほうがもっと重要だと理解されている。

ところが、商品化に不可欠な設計やマーケティングといった分野の知識を技術者や科学者は持っていない。プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)のCEOであるボブ・マクドナルドはこう説明する。「わたしたちにとって、イノベーションとは発明ではありません。新しいアイデアを顧客の喜びに、最終的には売上と利益に転換することです。アイデアや技術を商品化できなければ、それはイノベーションではないのです」

さらに、ソーシャルメディアの力で強く結びつき合う世界では、金銭で買える知的財産だけが新たなアイデアの源ではない。世界中のあらゆるレベルの従業員それぞれが持っている知識を発見し、共有し、統合することが、同じくらい重要なのである。たとえば、本書執筆時点で、フェイスブックのユーザーは、平均で毎月90件の記事――家族写真から、他のウェブサイトへのリンクまで――を投稿し、その結果、300億以上ものコンテンツが共有されている。イノベーションの力は、プロから大衆へと移行しつつあるのだ。フェイスブックのようなソーシャルメディア・ツールによって、創造性は民主化されている。経営戦略コンサルタントのゲイリー・ハメルは言う。「自然なヒエラルキー、透明性、共同作業といったネット世界の基本原則を、経営にも取り込まなければならなくなるだろう。少数に力を与え、大多数からそれを奪うという考え方はもう古い」

しかし、トップダウン型のR&Dシステムを開放して、従業員や顧客からのボトムアップのインプットを受け入れるのは、なかなかできないものである。若く、独創的な従業員は、ソーシャルメディアのような新しい技術を利用し、仮想の井戸端会議でブレーンストーミングを行う。ところが、ピラミッド型の組織では、こうした手法を取り込むのは難しい。大手技術サービス企業の最高情報責任者(CIO)は、わたしたちにこう言った。「若手社員の多くは、フェイスブック上で新しい着想を得ます。フェイスブックは、人々が集まってアイデアを生み出す仮想のブレーンストーミングの場になっています。そこで生まれたアイデアが、社内の研究開発に役立つかもしれないのです」

要するに、体系化されたイノベーション手法はもう役に立たないのだ。過去何年も、こうした手法が企業の生き残りと成長の助けとなってきたのは、変化が比較的少なく、遅く、予測可能で、資源の豊かな世界で競うために作られたものだからである。そんな世界はもう存在しない。今日の複雑で混沌としたビジネス環境には、イノベーションと成長のための新たな手法が必要だ。倹約的で、柔軟性があり、多くの人を取り込む手法である。


ナヴィ・ラジュ 、ジャイディープ・プラブ 、シモーヌ・アフージャ 著『イノベーションは新興国に学べ!―カネをかけず、シンプルであるほど増大する破壊力―』(日本経済新聞出版社、2013年)「第1章」から

ナヴィ・ラジュ Navi Radjou
ケンブリッジ大学ジャッジ・ビジネススクール フェロー。シリコンバレーを中心に戦略コンサルタントとして活躍。ダボス会議のファカルティ・メンバーであり、ニューヨーク・タイムズ紙、エコノミスト誌、ウォール・ストリート・ジャーナル紙などのメディアで取り上げられた。

ジャイディープ・プラブ Jaideep Prabhu
ジャワハルラール・ネルー大学教授。ケンブリッジ大学ジャッジ・ビジネススクールでディレクターを務めるほか、UCLA、インペリアル・カレッジ・ロンドンなどにも籍を置く。専門であるマーケティング、イノベーション、戦略の研究は、BBC News24、ビジネスウィーク誌、フィナンシャル・タイムズ紙など、数多くのメディアで特集されている。

シモーヌ・アフージャ Simone Ahuja
ブラッド・オレンジ創設者。新興国におけるマーケティング戦略のスペシャリスト。ペプシコ、P&G、ベストバイなどのフォーチュン100 企業や、ケンブリッジ大学ジャッジ・ビジネススクールのアドバイザーを務め、HBR.comにも寄稿している。

http://bizgate.nikkei.co.jp/article/14523415.html



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[ 2014年01月24日 11:19 ] カテゴリ:国際 | TB(0) | CM(0)
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