意味不明な乱高下を繰り返す日本株…幅を利かす短期売買
[東京 24日 ロイター] -日本株が乱高下している。米経済や米金融政策の見方が定まらない中で、長期投資家は様子見。薄商いの中でヘッジファンドなど一部の海外短期筋が、アルゴリズムを駆使した売買を繰り返すなどマーケットで幅を利かせている。
中国経済への懸念があらためて浮上しているが、完全に悲観に傾いたわけではなく、海外投資家の間では日銀の追加緩和への期待が膨らんでいる。
逆転に次ぐ逆転
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「逆転に次ぐ逆転」──。野球なら観客には面白い展開だが、日本株市場の値動きとあっては「意味不明な乱高下」(国内証券ディーラー)と、眉をひそめる市場関係者も多い。
週明け24日の東京市場で、日経平均<.N225>は113円安、117円高、207円安とプラス圏とマイナス圏を行ったりきたりする目まぐるしい展開となった。引け際も27円安まで下げ幅を縮め、プラス圏までわずかに迫るなど方向性がまったく定まらない。日経平均は前週、400円高が2回、300円安が1回と振れの大きい展開だったが、不安定さが今週も続いている。
株式市場では、不安定さは長期投資家に嫌われる。ボラティリティの上昇はパフォーマンスの低下につながるため、最近の日本株の乱高下に「長期投資家は国内、海外ともに様子見」(国内投信)だという。長期投資家が手控えていることで売買ボリュームは低下。東証1部売買代金は2兆円前後の低い水準で推移している。
その薄商いの中で、目立っているのが短期筋による売買だ。裁定買い残は1年前の水準に低下したが、「先物を使って仕掛け的な売買をみせている」(大手証券トレーダー)という。
ドル/円は102円円台で動きが鈍く、昨年のような日本株とドル/円を組み合わせた大規模なトレードは鳴りを潜めているが、仕掛け的な売買にアルゴリズム取引が加わり、値動きを加速させているとの見方が多い。
経済や政策の見方揺れる
相場が不安定なのは、経済や政策に対する投資家の見方が揺れているためでもある。米経済指標は寒波の影響で下振れしているが、悪天候の影響を除けば堅調なのかがまだわからない。その結果、米量的緩和縮小(テーパリング)や利上げのペースも読みにくくなっている。
24日の市場で悪材料とされたのは、中国株の下落だった。上海証券報は24日、一部の銀行が鉄鋼、セメント、不動産関連企業に対する融資の実行を厳格化し始めたと伝えたことがきっかけになったという。上海総合指数<.SSEC>は一時2%を超える下げとなり、アジア株全体が軟化した。
ただ、上海証券報は興業銀行<601166.SS>が一部のタイプの不動産関連融資を停止した可能性があると報じたが、他の複数の銀行は不動産融資に関する方針を変更していないとしている。材料自体というよりも、上海株の下げの大きさが嫌気された可能性がある。中国経済に対する見方が悲観に傾いたわけではないようだ。
「全人代も来週に迫り、経済が下振れるようなことがあれば政策対応が期待できる。中国政府は今年、構造改革を進める方針であり、経済が減速することもあるだろうが、政府目標より下回りそうであれば、昨年のように景気対策をとるだろう」と、楽天経済研究所シニア・マーケットアナリストの土信田雅之氏は指摘している。
海外勢、日本株の見方分かれる
日本においては、海外投資家がアベノミクスに失望しているとの指摘も市場の一部から出ているが、年初からの日本株の下げは、米国経済指標の悪化や新興国問題を背景にしたリスクオン・ポジションの巻き戻しが主体との見方も多い。昨年末、日経平均が9連騰するなど過熱した分だけ、下落率も大きいという。
CLSAエクイティストラテジストのクリストファー・ウッド氏は、同社の日本株ウエートについて、ここ1年ではわずかにしか変化していないと明かしたうえで、アベノミクスについては、労働市場の変化に注目しているとする。「春闘で1%以上の賃上げが達成されれば、海外投資家も今後の変革に期待を寄せるだろう。ゼロ%に近ければ失望につながるかもしれない」と話す。
2月11─19日の間に欧州投資家30社強を訪問したシティグループ証券・チーフエコノミストの村嶋帰一氏によると、日本経済や日本株市場に対する見方は、投資家のタイプによってやや差が見られたという。
日本株を専業としないが日本株に投資しているグローバル株式投資家はやや楽観的であった一方、日本株のエキスパートやマクロヘッジファンド、グローバル債券投資家はやや慎重だったとしている。
共通していたのは日銀による追加金融緩和が最大の鍵という点で、逆にそれ以外はカタリスト(材料)にはなりにくいとの見方が目立ったと話している。
(伊賀大記 編集:田巻一彦)
http://toyokeizai.net/articles/-/31532
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