中国のむなしき「新5カ年計画」 共産党独裁の矛盾と欠陥露呈
中国の新5カ年計画が打ち出された。国内総生産(GDP)成長率は年平均6・5%以上を保ち、2020年までにGDPと国民の平均収入を10年比で倍増▽技術革新に力を入れ産業構造を高度化▽GDPに占める研究開発費の割合を2・5%まで高める▽農村から都市への移住を進める▽経済成長に占めるサービス業の貢献率を高める-などとした。
新5カ年計画の草案は、昨年11月に中国共産党から公表され、今回、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で正式に決定された。 GDP統計すらデタラメと言わざるをえない中国による新5カ年計画の数字を論じることほどむなしいものはない。「6・5%以上」というのは、習近平国家主席が目標として掲げているということ以上でも以下でもない。 要するに政治目標なので、実体経済とは無関係に習体制にとってみれば達成すべき数字だ。統計操作をしてでも、最終的には「達成」されるだろう。政治的な意味としては、前より少しだけ成長率目標が下がり、多少成長できなくても政治的な責任を問われないということになる。
「一帯一路(陸と海の新シルクロード)」構想も掲げられた。その裏側にあるのが制度的発言権であり、世界のさまざまな枠組みのなかで主導権を握る意欲という意味で使っている。中国主導で設立したアジアインフラ投資銀行(AIIB)などを通して世界の経済秩序を主導したいようだ。経済的な側面では、国内の過剰生産問題のはけ口としての利用価値もある。
ただし、AIIBは国際的な格付けが取れないなど、必ずしも順調に進んでいない。この状況を見てもわかるが、技術革新、産業高度化などは目標として掲げてはみても、その実現は難しい。
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中国は1人当たりGDPが1万ドルを超えにくいといういわゆる「中所得国の罠」にはまっている。 これまでのデータで、罠を超えた国の1人当たりGDPと第2次産業就業者比率の推移をみると、1人当たりGDP1万ドルまでは第2次産業就業者のシェアが十分に上昇し、1万ドルを超えてからは第2次産業就業者のシェアが低下する傾向にある。 一方、罠を超えられなかった国では、第2次産業就業者のシェアが上昇しないまま第2次産業が頭打ちになってしまい、「早すぎる脱工業化」という状況に陥っている。
中国が経済成長に占めるサービス業の貢献率を高めるというのも、どうやら第2次産業が伸びないという悩みが表面化しているのだろう。中国の第2次産業は国有企業が中心なので、技術進歩などの成果を取り込めないのではないか。 第2次産業は、貿易自由化・資本自由化を通して、全国的あるいは世界的な市場を対象とすることができるが、中国の場合、共産党の一党独裁体制なので完全な貿易自由化・資本自由化を行えない。そのため、第2次産業が十分に発展できないという構造問題がある。その欠陥が露呈し始めているといえるだろう。
ZAKZAK (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20160311/dms1603110830008-n1.htm
【管理人 補足記事&コメント】
李克強指数に含まれる3つの指標のうち、電力消費量と鉄道貨物輸送量は製造業の生産動向に左右されやすい一方、サービス産業の動向は反映しにくい。製造業の生産拠点は高炉、造船所、石油化学コンビナート、自動車工場、半導体工場など電力多消費型である。サービス産業の生産拠点であるオフィスビル、商店、レストラン、病院、学校などに比べて電力消費量が桁違いに大きい。
また、鉄道貨物は製造業の生産に必要な原材料や生産された製品を運ぶ手段であり、サービス業にはほとんど無縁である。このように、電力消費量と鉄道貨物輸送量は製造業の生産動向を判断するのに適した経済指標である。したがって、製造業の動向が中国経済の動きを代表していた時代には、李克強指数は中国経済を判断するうえである程度有益な指標だった。しかし貨物輸送については、経済発展に伴って高速道路等の整備が進むと、トラック輸送の利便性・効率性が大幅に向上することから、鉄道輸送からトラック輸送へとシフトするだろう。どんな指標で有れ実体経済の詳細が不明でも、中国経済が低迷という事に変わりがない。
新5カ年計画の草案は、昨年11月に中国共産党から公表され、今回、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で正式に決定された。 GDP統計すらデタラメと言わざるをえない中国による新5カ年計画の数字を論じることほどむなしいものはない。「6・5%以上」というのは、習近平国家主席が目標として掲げているということ以上でも以下でもない。 要するに政治目標なので、実体経済とは無関係に習体制にとってみれば達成すべき数字だ。統計操作をしてでも、最終的には「達成」されるだろう。政治的な意味としては、前より少しだけ成長率目標が下がり、多少成長できなくても政治的な責任を問われないということになる。
「一帯一路(陸と海の新シルクロード)」構想も掲げられた。その裏側にあるのが制度的発言権であり、世界のさまざまな枠組みのなかで主導権を握る意欲という意味で使っている。中国主導で設立したアジアインフラ投資銀行(AIIB)などを通して世界の経済秩序を主導したいようだ。経済的な側面では、国内の過剰生産問題のはけ口としての利用価値もある。
ただし、AIIBは国際的な格付けが取れないなど、必ずしも順調に進んでいない。この状況を見てもわかるが、技術革新、産業高度化などは目標として掲げてはみても、その実現は難しい。
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中国は1人当たりGDPが1万ドルを超えにくいといういわゆる「中所得国の罠」にはまっている。 これまでのデータで、罠を超えた国の1人当たりGDPと第2次産業就業者比率の推移をみると、1人当たりGDP1万ドルまでは第2次産業就業者のシェアが十分に上昇し、1万ドルを超えてからは第2次産業就業者のシェアが低下する傾向にある。 一方、罠を超えられなかった国では、第2次産業就業者のシェアが上昇しないまま第2次産業が頭打ちになってしまい、「早すぎる脱工業化」という状況に陥っている。
中国が経済成長に占めるサービス業の貢献率を高めるというのも、どうやら第2次産業が伸びないという悩みが表面化しているのだろう。中国の第2次産業は国有企業が中心なので、技術進歩などの成果を取り込めないのではないか。 第2次産業は、貿易自由化・資本自由化を通して、全国的あるいは世界的な市場を対象とすることができるが、中国の場合、共産党の一党独裁体制なので完全な貿易自由化・資本自由化を行えない。そのため、第2次産業が十分に発展できないという構造問題がある。その欠陥が露呈し始めているといえるだろう。
ZAKZAK (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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李克強指数に含まれる3つの指標のうち、電力消費量と鉄道貨物輸送量は製造業の生産動向に左右されやすい一方、サービス産業の動向は反映しにくい。製造業の生産拠点は高炉、造船所、石油化学コンビナート、自動車工場、半導体工場など電力多消費型である。サービス産業の生産拠点であるオフィスビル、商店、レストラン、病院、学校などに比べて電力消費量が桁違いに大きい。
また、鉄道貨物は製造業の生産に必要な原材料や生産された製品を運ぶ手段であり、サービス業にはほとんど無縁である。このように、電力消費量と鉄道貨物輸送量は製造業の生産動向を判断するのに適した経済指標である。したがって、製造業の動向が中国経済の動きを代表していた時代には、李克強指数は中国経済を判断するうえである程度有益な指標だった。しかし貨物輸送については、経済発展に伴って高速道路等の整備が進むと、トラック輸送の利便性・効率性が大幅に向上することから、鉄道輸送からトラック輸送へとシフトするだろう。どんな指標で有れ実体経済の詳細が不明でも、中国経済が低迷という事に変わりがない。
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