日本の所得格差拡大は本当なのか 再分配機能は強化の方向にある
厚生労働省は、世帯ごとの所得格差が2013年に過去最大となったとの調査結果を発表した。背景には高齢化があるとの報道や、国際的に見ると日本の所得の再分配機能は弱いといった解説もあるが、実際のところはどうなのだろうか。厚労省が発表したのは「ジニ係数」である。イタリアの統計学者ジニが考案した社会全体における所得分配の格差を表す指標で、係数の値が「0」に近いほど格差が少なく、「1」に近いほど格差が大きいことを意味する。
ジニ係数は2種類あり、課税前・社会保障給付前の「当初所得」、課税後・社会保障給付後の「再分配所得」について計測されている。所得再分配調査と呼ばれる調査が3年に1度行われている。13年の当初所得ジニ係数は0・5704で、前回調査の10年時点より0・0168ポイント増加。再分配所得ジニ係数は0・3759で、10年時点より0・0032ポイント減少した。 マスコミの報道を見ると、当初所得ジニ係数のみに注目して、「戦後最高」と強調したものもあるが、再分配所得ジニ係数をみると減少しており、税・社会保障給付による再分配が強化されていることが分かる。
ちなみに当初所得ジニ係数は、01年が0・4983、04年が0・5263、07年が0・5318、10年が0・5536、13年が0・5704と増加傾向が続いている。高齢者ではそれぞれの社会キャリアが異なるため、結果的に所得格差が大きくならざるを得ないが、その高齢者世帯の割合が増えていることが要因である。一方、再分配所得ジニ係数は01年が0・3812、04年が0・3873、07年が0・3758、10年が0・3791、13年が0・3759と上昇に歯止めがかかっている。
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ちなみに、当初所得ジニ係数と再分配所得ジニ係数の差の当初所得ジニ係数に対する比率によって、所得格差是正効果を見ることができる。その数値をみると、01年が23・5%、04年が26・4%、07年が29・3%、10年が31・5%、13年が34・1%と、年々所得格差の是正は強化されている。
次にジニ係数を国際比較してみよう。経済協力開発機構(OECD)による12年のデータがある。国際比較をするために、日本の厚労省の数値とは異なっているが、日本の当初所得ジニ係数は0・488、再分配所得ジニ係数は0・33である。OECDの平均は、当初所得ジニ係数が0・475、再分配所得が0・314であり、日本はほぼ平均的な数字だ。また、日本の所得格差是正効果は32・4%で、こちらもOECD平均の33・5%とほぼ同じである。
こうしたデータから、国際的に見て日本の所得の再分配機能は必ずしも弱いわけではなく、平均的であり、傾向としては再分配機能が強化されているというのが事実である。所得再分配については、各人の価値観によって対応が異なるが、当面は機能強化の方向であろう。なお、10年度予算・税制は民主党、13年度は自民・公明党政権だったが、13年のほうが所得格差改善が相対的に大きいことに注目してもいい。
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20160924/dms1609241530004-n1.htm
【管理人 補足記事&コメント】
富の再分配または所得再分配とは、所得を公平に配分するため、租税制度や社会保障制度、公共事業などを通じて一経済主体から別の経済主体へ所得を移転させることをいう。富の再分配・所得再分配は、貧富の差を緩和させ、階層の固定化とそれに伴う社会の硬直化を阻止して、社会的な公平と活力をもたらすための経済政策の一つであるとされる。富の再分配・所得再分配が指し示す範囲はかなり広く、富裕層・貧困層間の所得移転から先進国・発展途上国間の所得移転までも議論の対象となる。富の再分配・所得再分配は、低所得者にも社会階層において上昇する可能性を高める効果がある。そのため、社会的な公平性担保や貧困対策という面だけでなく社会の活力を維持する見地からも重要である。
所得再配分については、両極端の考え方があり、社会全体で見て、人々が得た所得の総額が高いほど幸せであり、所得の再配分をしなくてよいという考え方(ジェレミ・ベンサムの功利主義)と、社会で最も所得の低い人の幸せによって、社会全体の幸せの度合いが決まるため、所得は平等に分配されるべきという考え方(ジョン・ロールズの格差原理)がある。
何というのか経済学は回りくどいというのか良くわからない。単純に租税制度による所得再分配と社会保障制度による所得再分配、優遇税制度による所得再分配を考慮すれば、格差は緩和するだろう。ただし、非正規労働者が増えて、年金者が増えて、実質生産人口の賃金所得者が減少する中での所得再分配となると、対象人数が減少するほどに正規分布を形成しても、現状ではほとんど変わらないのでは…。。。
ジニ係数は2種類あり、課税前・社会保障給付前の「当初所得」、課税後・社会保障給付後の「再分配所得」について計測されている。所得再分配調査と呼ばれる調査が3年に1度行われている。13年の当初所得ジニ係数は0・5704で、前回調査の10年時点より0・0168ポイント増加。再分配所得ジニ係数は0・3759で、10年時点より0・0032ポイント減少した。 マスコミの報道を見ると、当初所得ジニ係数のみに注目して、「戦後最高」と強調したものもあるが、再分配所得ジニ係数をみると減少しており、税・社会保障給付による再分配が強化されていることが分かる。
ちなみに当初所得ジニ係数は、01年が0・4983、04年が0・5263、07年が0・5318、10年が0・5536、13年が0・5704と増加傾向が続いている。高齢者ではそれぞれの社会キャリアが異なるため、結果的に所得格差が大きくならざるを得ないが、その高齢者世帯の割合が増えていることが要因である。一方、再分配所得ジニ係数は01年が0・3812、04年が0・3873、07年が0・3758、10年が0・3791、13年が0・3759と上昇に歯止めがかかっている。
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ちなみに、当初所得ジニ係数と再分配所得ジニ係数の差の当初所得ジニ係数に対する比率によって、所得格差是正効果を見ることができる。その数値をみると、01年が23・5%、04年が26・4%、07年が29・3%、10年が31・5%、13年が34・1%と、年々所得格差の是正は強化されている。
次にジニ係数を国際比較してみよう。経済協力開発機構(OECD)による12年のデータがある。国際比較をするために、日本の厚労省の数値とは異なっているが、日本の当初所得ジニ係数は0・488、再分配所得ジニ係数は0・33である。OECDの平均は、当初所得ジニ係数が0・475、再分配所得が0・314であり、日本はほぼ平均的な数字だ。また、日本の所得格差是正効果は32・4%で、こちらもOECD平均の33・5%とほぼ同じである。
こうしたデータから、国際的に見て日本の所得の再分配機能は必ずしも弱いわけではなく、平均的であり、傾向としては再分配機能が強化されているというのが事実である。所得再分配については、各人の価値観によって対応が異なるが、当面は機能強化の方向であろう。なお、10年度予算・税制は民主党、13年度は自民・公明党政権だったが、13年のほうが所得格差改善が相対的に大きいことに注目してもいい。
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20160924/dms1609241530004-n1.htm
【管理人 補足記事&コメント】
富の再分配または所得再分配とは、所得を公平に配分するため、租税制度や社会保障制度、公共事業などを通じて一経済主体から別の経済主体へ所得を移転させることをいう。富の再分配・所得再分配は、貧富の差を緩和させ、階層の固定化とそれに伴う社会の硬直化を阻止して、社会的な公平と活力をもたらすための経済政策の一つであるとされる。富の再分配・所得再分配が指し示す範囲はかなり広く、富裕層・貧困層間の所得移転から先進国・発展途上国間の所得移転までも議論の対象となる。富の再分配・所得再分配は、低所得者にも社会階層において上昇する可能性を高める効果がある。そのため、社会的な公平性担保や貧困対策という面だけでなく社会の活力を維持する見地からも重要である。
所得再配分については、両極端の考え方があり、社会全体で見て、人々が得た所得の総額が高いほど幸せであり、所得の再配分をしなくてよいという考え方(ジェレミ・ベンサムの功利主義)と、社会で最も所得の低い人の幸せによって、社会全体の幸せの度合いが決まるため、所得は平等に分配されるべきという考え方(ジョン・ロールズの格差原理)がある。
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