「就活」が、働かないオジサンを生む!?
なぜ、「出向=島流し」なのか?
今年の7月から9月の毎週日曜日は、人気ドラマ「半沢直樹」(TBS系・毎週日曜21時~)をテレビの前で心待ちにしていた。速いドラマ展開に引き込まれながら、妻と2人で画面にくぎ付けになっていた。ラストシーンでは、社長から出向を言い渡された半沢直樹のショックを受けた苦渋の表情が印象的だった。妻は「出向になると、なぜ島流しのような受け止め方になるの?」と疑問に思ったようだ。
彼女の発言を聞いたときに、かつて取材した元銀行員のYさんのことを思い出した。都市銀行に勤めていた彼は、首都圏の大型支店の副支店長として赴任した。朝早くから夜遅くまで、また、休日も返上して支店の業績向上に邁進した。しかし支店長とそりが合わず、結局は45歳で関連のリース会社に出向になった。それから2~3年は、悶々とした日々を送っていたという。それほどショックだったようである。
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ドラマ「半沢直樹」の原作である『オレたちバブル入行組』(池井戸潤著、文春文庫)の中にも、「三十代の出向ならば、在籍のままで銀行への復帰が濃厚。それが四十代となると、片道切符の転籍出向となって、二度と銀行に戻ることはない。」(145ページ)というくだりもある。
銀行員になった私の友人も、50代になると、子会社の総合研究所の役員や取引先の建設会社の経理部長などになっている。銀行本体に残っているのは、役員まで昇格した人だけだ。
銀行員の出世の構造
ここでは出向だけでなく、銀行員の人事評価や出世という観点を交えながら、「働かないオジサン」が生まれる構造を考えてみたい。
銀行は、大学生にとって大口の就職先である。メガバンクになると、総合職だけでも毎年数百人単位の採用数がある。この背景には、企業が卒業予定の学生を対象に内定を出し、卒業後すぐに勤務させる新卒一括採用という、日本独特の雇用慣行がある。
採用された総合職は、毎年、同期として同じスタートラインにつく。銀行員の出世レースが始まるのである。長く都市銀行で働いた後に、作家に転じた江上剛氏の企業小説『失格社員』にも、銀行員の評価についての記述がある。入社7年目までは一律の扱いをされるが、そこから役職や給与の差がつき始める。
一般企業でいえば係長クラスである主事(年収ベースで200万円はアップ)に最初に昇進するのは、同期入社のうち3割にすぎない。この最初に昇進する社員を第一選抜と呼ぶことがあるという。翌年以降は、残った行員7割の内、1割か2割程度が毎年昇進する。
これは単なる評価づけにとどまらず、その後の働く部署にも影響するらしい。第一選抜だと、本部の企画部門や国際・証券分野などに抜擢され、第二選抜なら国内審査・債権回収部門などの少し華やかさに欠けるポストに配属。第三選抜以下になると、支店勤務で銀行員生活を終わることが普通になると、小説では書かれている。
そして、その後も出世競争は続く。次に来る大きなポイントは、「30代後半の管理職の選別である」と、メガバンクの行員は語る。一般企業でいうと、本部の課長クラスの登用に該当する。
新聞や経済誌の銀行特集記事などを踏まえると、この管理職の切符を最短の年次で手にするのは、同期入社のうち全体の2~3割程度で、次の年以降、何割かが昇進していく仕組みになっているようだ。そしてこの後も、支店長や本部の部長、役員などへの選別が進むのである。
あるメガバンクの有価証券報告書を見ると、最初に執行役員になるのが、入社27年の50歳あたりである。もちろん同期入社の中でも、役員になるのはごくわずかにすぎない。ある都銀の元行員の話では、200人の同期のうち役員になったのは2人であるという。
新卒一括採用が「働かないオジサン」を生み出す!
下の図を見てもらえればわかるように、先ほど述べた新卒一括採用により、毎年毎年大量の入社者が続く。一方で、会社組織はピラミッド構造になっていて、上位職になるほどポストの数は先細りする。
昇進を続けてポストを獲得できる社員の数は、年次を経るにつれてますます減少するので、ピラミッド構造から脱落する社員が増えていく。その場にとどまろうとしても、次の世代が後ろから迫ってくるのである。
都市銀行で支店長を経験した元行員に、銀行で「働かないオジサン」の生まれる理由を聞いてみると、
「役職が上がるにつれてポストは減少し、元気のある後輩もいるので、どこかで権限のある役職から離れざるをえません。そのときにオジサンは、頑張ってもこれ以上は給料が増えない、出世もしないことを悟って、働かなくなるのです」
と説明してくれた。
毎年毎年、ところてん方式で社員が後ろから順繰りに押し出されてくる。そういう意味では、「働かないオジサン」を生み出す構造を形作っているのは、毎年の新卒一括採用とピラミッド型の会社組織であると言えそうだ。
欠員補充の中途採用が中心で、役員すら外部から登用することが普通である欧米の企業とはまったく異なるのである。銀行の人事運用では、基本的に敗者復活がないというのも、毎年毎年、ポスト待ちの行員が行列をなして後ろに控えているので、行員のリカバリーを認める余裕がないと言えそうだ。
出向は、組織から脱落した社員の受け皿
出向は、このピラミッド構造から脱落した社員のポストを確保するという重要な役割を持っていて、脱落者の受け皿になっている。前出の元行員によれば、彼が支店長在任中の重要な仕事のひとつは「先輩支店長向けの出向先探し」だったという。
また、ドラマ「半沢直樹」では、左遷や降格の処遇としての出向が強調されていた。しかし彼によると、必ずしもそうではなく、栄転型の出向もあるし、評価が落ちた人材ばかりを取引先に送り込むことなんてできない。逆に、銀行内に左遷や降格の配置先はいくらでもあるという。
ただ出向は、やる気や意欲はあっても、不本意に銀行を離れざるをえないので、島流しのように描かれていたのだろう。
あるメガバンクの中堅行員は、バブルの大量採用世代がまもなく50代に突入するため、その頃には出向できる社員の割合も減少するだろうと語っている。相次いで行われた合併によるポストの減少も考慮に入れると、ますます働かないオジサンを生み出す基盤が強固になっていると言えそうだ。
今回は銀行をひとつの例に、働かないオジサンを生み出す構造について述べてきた。
しかしこの構造は、高度成長時代に羽振りのよかった会社や伝統的な企業では、多かれ少なかれ相似形であろう。むしろ銀行のように多くの出向先を持たないという意味では、もっと深刻な課題になっている会社も少なくないと思われる。
http://toyokeizai.net/articles/-/25690
【管理人コメント】
現実はそんなに甘くは無い。
大手企業の出向というと責任と権限に於いて当然人事考課も下がる。社内リストラよりダメージは大きい。
本社で私などが指導という名目で出張しても、平社員なのに社長までぺこぺこする。
ある企業に役職になってから長期出張である仕事を国内で立ち上げた。年間300名の出向組がばらまかれる当時のコ●カは、課長クラスだ。その企業の系列工場をかりて指導したら、途中で管理職が全部入れ替わる。一年毎いろいろ回るのだろうか?一時怒り狂って奴らを全員呼びつけて怒鳴り散らしたことがある。
その後、役職連中が全員で”おもてなし”だ。理由を聞くと何とも怒れない状態になるほどかわいそうな状態だった。勿論1人で飛ばされ金銭的にも宿泊する場所にも…。。。
とはいえ私も殆ど出張人間だった。出張なのに一番長い出張は一年だ。
何とも酷い話しだが、自社の組織を作り教育と新製品立ちあげとを兼ねてでは、その程度を必要とする。
出向と違うのは責任と権限があると言う点だろう。
さらに将来があると言う事だ。
出向者は我々指導者によって随分と変わってくれる。周りの環境が必要だ。
今でも同じなのか?
課長待遇という境界線があり、今後さらに上がる者と、年功序列で上がってきた連中との差で分けられる。
下からは試験でどんどん昇級してくる。しまいにはそいつらに使われる。働く元気がなくなるのも無理は無い。
辞めるよりはマシだが、家庭崩壊になっても我慢する連中が現実多いのだ。難しい問題だ。
だが当時よりは人数的にはかなり少なくなったのでは無いか?
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