福島原発、原子炉冷却へ総力戦 真水注入に切り替え!!
東京電力福島第1原子力発電所1、3号機で、原子炉に送り込む海水を真水に切り替えた。原子炉に海水を入れ続けると塩分で原子炉に損傷を与える恐れもあり、真水への切り替えが求められていた。米軍の協力も得た総力戦で、原子炉の安定的な冷却に向けた作業を急ぐが、道はなお険しい。
東日本大震災による津波で原子炉に冷却水を送るポンプの非常用発電機が停止したため、東電は12日から消防車のポンプを使って1?3号機の原子炉圧力容器に海水を送り込んでいた。
海水に代わって送り込んだ真水は、生活用水に使っていた坂下ダム(福島県大熊町)の水をタンクに送った後、消防車のポンプで注入した。いずれも外部電源を接続できたため、タンクから水を取り出せるようになった。2号機は26日にも切り替える。
■海水は緊急措置
当初はタービン建屋にあるポンプを復旧して真水に切り替える計画だった。ただ、ポンプの復旧を進めていた作業員が被曝(ひばく)し断念。消防車のポンプを原子炉建屋の配管につなぐ方法で真水を送り込んだ。
海水から真水への切り替えを急いだ理由は、海水に約3.5%含まれる塩分が原子炉に様々な悪影響を与えるからだ。本来、原子炉に入れる水は不純物を除いた真水。海水を使ったのは、地震によって大量の真水が手に入らず、過熱した原子炉を冷やすための緊急措置だった。
塩分に含まれる塩素には、金属を腐食させる性質がある。「塩素は原発では禁物だ」と奈良林直・北海道大学教授は指摘する。福島第1原発では配管に帯状のひび割れが見つかったことがある。海水に含まれる塩素が長時間かけて配管を腐食させたという。
海水中の塩分が固まる可能性もある。1?3号機の原子炉内はセ氏100度を超え、海水が沸騰して塩分の濃度が高い。溶けきれなくなった塩分が結晶となり配管をふさいだり弁が動かなくなったりする可能性もある。
「海水を原子炉に入れ続けるのは10日間が限界だ」と奈良林教授。10日間原子炉に塩がたまり続けると燃料棒が塩分で覆われる。これにより放射性物質を包むジルコニウム合金製の被覆管が腐食して中身の核燃料が出る危険がある。真水に切り替えれば塩分が真水に溶け出し、被覆管の腐食は避けられる。
■水たまりが障害に
東電などは今後、米軍の協力も得ながら、原子炉へ送り込む真水の注入を加速する。いったん中断していたタービン建屋にあるポンプの復旧作業も進める。ポンプが回復すれば、大量の真水を送り込めるようになる。ただ、圧力容器からタービンなどにつながる配管に亀裂が入り注入した真水が漏れている可能性もあり、十分な冷却効果が得られるかは不明だ。
そのため、原子炉の冷却にとって最も効果が高い熱交換器の復旧を急ぐ。熱交換器は原子炉の内部を通った水の熱を、海水を介して冷却する装置。冷却効果が高く、これが正常に動けば、原子炉が100度以下に冷える「冷温停止」という安全な状態に、2?3日でもっていけるという。
ただ、熱交換器の復旧には時間がかかる可能性もある。地震の揺れなどで原子炉と熱交換器をつなぐ配管や冷却水を送るポンプなどが壊れたかもしれないからだ。もし壊れていた場合は配管やポンプを交換したうえで、電気系統の確認などが必要になる。1?4号機のタービン建屋には放射性物質を含む水たまりがある。復旧作業では被曝する恐れもあり、容易には現場に近づけない。復旧はなお難航が予想される。
(NIKKEI)
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東日本大震災による津波で原子炉に冷却水を送るポンプの非常用発電機が停止したため、東電は12日から消防車のポンプを使って1?3号機の原子炉圧力容器に海水を送り込んでいた。
海水に代わって送り込んだ真水は、生活用水に使っていた坂下ダム(福島県大熊町)の水をタンクに送った後、消防車のポンプで注入した。いずれも外部電源を接続できたため、タンクから水を取り出せるようになった。2号機は26日にも切り替える。
■海水は緊急措置
当初はタービン建屋にあるポンプを復旧して真水に切り替える計画だった。ただ、ポンプの復旧を進めていた作業員が被曝(ひばく)し断念。消防車のポンプを原子炉建屋の配管につなぐ方法で真水を送り込んだ。
海水から真水への切り替えを急いだ理由は、海水に約3.5%含まれる塩分が原子炉に様々な悪影響を与えるからだ。本来、原子炉に入れる水は不純物を除いた真水。海水を使ったのは、地震によって大量の真水が手に入らず、過熱した原子炉を冷やすための緊急措置だった。
塩分に含まれる塩素には、金属を腐食させる性質がある。「塩素は原発では禁物だ」と奈良林直・北海道大学教授は指摘する。福島第1原発では配管に帯状のひび割れが見つかったことがある。海水に含まれる塩素が長時間かけて配管を腐食させたという。
海水中の塩分が固まる可能性もある。1?3号機の原子炉内はセ氏100度を超え、海水が沸騰して塩分の濃度が高い。溶けきれなくなった塩分が結晶となり配管をふさいだり弁が動かなくなったりする可能性もある。
「海水を原子炉に入れ続けるのは10日間が限界だ」と奈良林教授。10日間原子炉に塩がたまり続けると燃料棒が塩分で覆われる。これにより放射性物質を包むジルコニウム合金製の被覆管が腐食して中身の核燃料が出る危険がある。真水に切り替えれば塩分が真水に溶け出し、被覆管の腐食は避けられる。
■水たまりが障害に
東電などは今後、米軍の協力も得ながら、原子炉へ送り込む真水の注入を加速する。いったん中断していたタービン建屋にあるポンプの復旧作業も進める。ポンプが回復すれば、大量の真水を送り込めるようになる。ただ、圧力容器からタービンなどにつながる配管に亀裂が入り注入した真水が漏れている可能性もあり、十分な冷却効果が得られるかは不明だ。
そのため、原子炉の冷却にとって最も効果が高い熱交換器の復旧を急ぐ。熱交換器は原子炉の内部を通った水の熱を、海水を介して冷却する装置。冷却効果が高く、これが正常に動けば、原子炉が100度以下に冷える「冷温停止」という安全な状態に、2?3日でもっていけるという。
ただ、熱交換器の復旧には時間がかかる可能性もある。地震の揺れなどで原子炉と熱交換器をつなぐ配管や冷却水を送るポンプなどが壊れたかもしれないからだ。もし壊れていた場合は配管やポンプを交換したうえで、電気系統の確認などが必要になる。1?4号機のタービン建屋には放射性物質を含む水たまりがある。復旧作業では被曝する恐れもあり、容易には現場に近づけない。復旧はなお難航が予想される。
(NIKKEI)
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