「集団的自衛権の行使を認めると徴兵制になる」の主張は“世界の非常識”
安全保障法制にからみ、人々の不安を煽(あお)る言葉に「集団的自衛権の行使を認めると、徴兵制になる」というものがある。これを心配して、炎天下のデモに子供連れで参加する人もいるようだ。しかし、その言葉は事実ではないので、罪作りである。当コラムでは、先進国では徴兵制はあり得ないと書いてきた。簡単に言えば、素人は使ええず、逆に足手まといだからだ。これをおさらいしよう。世界各国の徴兵制については、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、米国、英国の先進7カ国(G7)はすべて徴兵制ではない。
集団的自衛権との関連でいえば、北大西洋条約機構(NATO)加盟国は、当然ながら集団的自衛権の行使が前提である。NATO28カ国中、徴兵制でない国は22カ国、徴兵制が5カ国、今は徴兵制でないがロシアの脅威で再開する国が1カ国である。フランス、ドイツなど最近、徴兵制度をやめる国も増えている。一方、欧州でNATOに入っていない5カ国、つまり集団的自衛権の行使は否定しないが、それに頼らずに個別的自衛権で防衛する国では、スウェーデン以外の4カ国が徴兵制だ。個別的自衛権の国ほど徴兵制を敷く傾向があるので、「集団的自衛権の行使を認めると、徴兵制になる」という主張は、世界の非常識だというしかない。そもそも、集団的自衛権の行使については、中国と韓国を除くほとんどの国が賛成である。これほど世界が賛成してくれるのであるから、「戦争法案」のはずがない。こうした世界の常識をマスコミが報道しないのなら、政府がもっと国民に知らせるべきであろう。基本情報すらなく、「戦争になる」とそそのかされて炎天下で子供連れのデモに参加している人を見ると哀れになる。「子供を戦争、徴兵制から守るために参加した」と聞くと、誰か世界の常識を教えてあげればいいのにと思ってしまう。
こうしたことを説明すると、最近「徴兵制はないが、経済的徴兵制がある」と反論する人もいる。英米の反戦的な人が言い出したもので、政府がわざと失業を放置して、志願兵にならざるを得なくしているという主張だ。先進国で徴兵制がなくなりつつある現実のなか、どうしても「徴兵制」という言葉を使いたいようだが、強制的ではない「経済的」と、強制的な「徴兵制」は矛盾した言葉である。 これを日本にあてはめると、違和感は増大する。日本の失業率は世界の中でも最低ランクである。失業者数が他国に比べて低いなかで、失業者の職業選択が自衛隊しかないというのも極端な話だ。このため、日本では経済的徴兵制になりえない。特に安倍晋三政権は、就業者数を民主党時代より大きく増加させ、完全雇用に近い水準まで失業率を低めた「雇用確保内閣」だ。「戦争をするため失業を作った」はウソである。防衛医科大の授業料が無料であることが経済的徴兵制の例とされることがあるが、これは以前からあったことで、集団的自衛権の話とは無関係だ。
ZAKZAK (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150801/dms1508011000001-n1.htm
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【管理人 補足記事&コメント】
徴兵制度(ちょうへいせいど)とは、国家が国民に兵役に服する義務を課す制度である。徴兵制とも言い、国民国家や国民皆兵の思想とかかわりが深く、志願兵(募兵)制度の対義語である。自分の意思で兵士になった人を志願兵や義勇兵と呼ぶのに対して、徴兵制度によって自分の意思によらず兵士になった人を徴集兵と呼ぶ。軍隊や部隊が住民や難民を強制的に徴発し兵・水兵等に利用することを強制徴募とよぶ。北アフリカ諸国の他、ロシア、韓国、ベトナム等では徴兵制が続いているが、冷戦終結後は、フランス、ドイツ、スウェーデンのように徴兵制度を廃止する国が増えつつあり、また、実施している国でも良心的兵役拒否を導入している場合が大半である。
軍隊の教育効果については戦後すぐから繰り返され論じられ、近年でも石原慎太郎など一部の政治家、著名人から徴兵制度を肯定したり、復活を主張する声が出ている。だが、徴兵制復活論の大部分は、俗流若者論に基づいたもので、少年犯罪や戦後日本社会におけるモラルの低下、あるいは近年顕著に報道される若者の無気力或は引きこもりやニートなどの様々な青少年問題の要因に、“軍隊で勉強すべき”とする人材もいる。
しかし現代の軍事状況下、国防という本来の存在意義や目的との関係性を考慮すれば、別の次元だろうと考える。教育はあくまで勉学を通じて教えるものである。徴兵制度は憲法から考えれば難しい問題だろう。集団的自衛権の行使が調徴兵制度に結び付ける事自体が問題である。
集団的自衛権との関連でいえば、北大西洋条約機構(NATO)加盟国は、当然ながら集団的自衛権の行使が前提である。NATO28カ国中、徴兵制でない国は22カ国、徴兵制が5カ国、今は徴兵制でないがロシアの脅威で再開する国が1カ国である。フランス、ドイツなど最近、徴兵制度をやめる国も増えている。一方、欧州でNATOに入っていない5カ国、つまり集団的自衛権の行使は否定しないが、それに頼らずに個別的自衛権で防衛する国では、スウェーデン以外の4カ国が徴兵制だ。個別的自衛権の国ほど徴兵制を敷く傾向があるので、「集団的自衛権の行使を認めると、徴兵制になる」という主張は、世界の非常識だというしかない。そもそも、集団的自衛権の行使については、中国と韓国を除くほとんどの国が賛成である。これほど世界が賛成してくれるのであるから、「戦争法案」のはずがない。こうした世界の常識をマスコミが報道しないのなら、政府がもっと国民に知らせるべきであろう。基本情報すらなく、「戦争になる」とそそのかされて炎天下で子供連れのデモに参加している人を見ると哀れになる。「子供を戦争、徴兵制から守るために参加した」と聞くと、誰か世界の常識を教えてあげればいいのにと思ってしまう。
こうしたことを説明すると、最近「徴兵制はないが、経済的徴兵制がある」と反論する人もいる。英米の反戦的な人が言い出したもので、政府がわざと失業を放置して、志願兵にならざるを得なくしているという主張だ。先進国で徴兵制がなくなりつつある現実のなか、どうしても「徴兵制」という言葉を使いたいようだが、強制的ではない「経済的」と、強制的な「徴兵制」は矛盾した言葉である。 これを日本にあてはめると、違和感は増大する。日本の失業率は世界の中でも最低ランクである。失業者数が他国に比べて低いなかで、失業者の職業選択が自衛隊しかないというのも極端な話だ。このため、日本では経済的徴兵制になりえない。特に安倍晋三政権は、就業者数を民主党時代より大きく増加させ、完全雇用に近い水準まで失業率を低めた「雇用確保内閣」だ。「戦争をするため失業を作った」はウソである。防衛医科大の授業料が無料であることが経済的徴兵制の例とされることがあるが、これは以前からあったことで、集団的自衛権の話とは無関係だ。
ZAKZAK (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150801/dms1508011000001-n1.htm
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徴兵制度(ちょうへいせいど)とは、国家が国民に兵役に服する義務を課す制度である。徴兵制とも言い、国民国家や国民皆兵の思想とかかわりが深く、志願兵(募兵)制度の対義語である。自分の意思で兵士になった人を志願兵や義勇兵と呼ぶのに対して、徴兵制度によって自分の意思によらず兵士になった人を徴集兵と呼ぶ。軍隊や部隊が住民や難民を強制的に徴発し兵・水兵等に利用することを強制徴募とよぶ。北アフリカ諸国の他、ロシア、韓国、ベトナム等では徴兵制が続いているが、冷戦終結後は、フランス、ドイツ、スウェーデンのように徴兵制度を廃止する国が増えつつあり、また、実施している国でも良心的兵役拒否を導入している場合が大半である。
軍隊の教育効果については戦後すぐから繰り返され論じられ、近年でも石原慎太郎など一部の政治家、著名人から徴兵制度を肯定したり、復活を主張する声が出ている。だが、徴兵制復活論の大部分は、俗流若者論に基づいたもので、少年犯罪や戦後日本社会におけるモラルの低下、あるいは近年顕著に報道される若者の無気力或は引きこもりやニートなどの様々な青少年問題の要因に、“軍隊で勉強すべき”とする人材もいる。
しかし現代の軍事状況下、国防という本来の存在意義や目的との関係性を考慮すれば、別の次元だろうと考える。教育はあくまで勉学を通じて教えるものである。徴兵制度は憲法から考えれば難しい問題だろう。集団的自衛権の行使が調徴兵制度に結び付ける事自体が問題である。
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