【韓国経済】韓国の鉄道輸出大幅減 日中攻勢の狭間でピーク時の10分の1に…
韓国最大の鉄道車両メーカー「現代ロテム」の経営に、黄信号がともっている。本業のもうけを示す営業損益が、2015年1~6月に130億ウォン(約13億円)の赤字に転落。2012年に1兆7000億ウォン(1740億円)だった鉄道の海外受注額が、15年1~9月までの間はわずか800億ウォン(81億円)と10分の1以下に落ち込んだのが大きな要因だ。受注低迷が続けば、大幅な人員削減を迫られる恐れもある。
■工場長が悲鳴「存続の危機だ」
「韓国の鉄道車両産業は存続の危機にひんしている。政府の支援が必要だ」
15年11月、現代ロテム昌原工場長のチャン・ヒョンギョ専務は、現地記者との懇談で悲痛な声を上げた。中核事業だった鉄道部門は1~9月期も222億ウォン(約23億円)の営業赤字となった。深刻なのは海外からの鉄道受注額の減少だ。 現代ロテムは、1999年に現代自動車傘下の現代精工と大宇重工業、韓進重工業の鉄道車両事業部門を統合して発足した。財閥系大手の合併で、鉄道車両メーカーとしては韓国で独占的な地位を占める。政府の鉄道インフラ輸出推進策を追い風に、ピークの2012年には鉄道の海外受注だけで約1兆7000億ウォンの売上高を計上した。
しかし、鉄道の海外受注額は13年に1兆4000億ウォン、14年は6000億ウォンと急速に減少。今年1~9月期の海外受注額は800億ウォンにまで減少した。海外受注減少の要因として、現代ロテムが強調するのが、中国勢などとの受注競争の激化だ。チャン専務は「海外の受注が急激に減少した。中国や日本、米国、フランスは政府が海外鉄道の受注支援に乗り出しているのに、韓国では孤立無援だ」と嘆く。
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■半数がリストラ?
中国は昨年、中国北車と中国南車の二大車両メーカーを統合し、国営鉄道車両会社「中国中車」(CRRC)を発足。習近平国家主席のトップセールスなどにより、今年に入ってインドネシアの高速鉄道建設で日本に競り勝ったほか、米国ラスベガス-ロサンゼルスの高速鉄道事業などを相次いで受注した。 一方、日本も事業費約1兆8000億円のインド高速鉄道建設計画をめぐり、15年12月の日印首脳会談で新幹線方式の採用に合意した。巨費が動く大規模なインフラ建設の国際受注競争は、技術力や資金力など国力の差を端的に象徴する。 現代ロテムの受注残高は現在、国内外あわせて約4兆ウォン(約4100億円)で、受注が急速に回復しない場合、来年末には生産調整に追い込まれる恐れもある。「約8000人の現場従業員のうち、半数が職を失う恐れもある」と深刻な指摘もなされている。
■研究開発費減で技術革新進まず
ただ、現代ロテムの経営難は、一概に政府支援の不足だけが問題なのではない。朝鮮日報グループの経済専門メディア「朝鮮Biz」は、連載企画「現代ロテム墜落」を5回にわたって報じた。そこには「1%にも満たない研究開発費」「品質低下」「役員の高額年俸」など、競争力低下の原因となる同社の負の遺産が克明に描かれている。 特に、競争力の源泉となる製品開発において問題となるのが、研究開発投資の減少だ。朝鮮Bizによると、現代ロテムの売上高に占める研究開発費は10年に2%だったが、その後は14年を除いて毎年1%程度の低水準にとどまる。15年(1~9月期累計)はわずか0.7%にまで落ち込み、「技術革新を怠り、品質低下を招いた」と批判の声もあがっている。
実際、現代ロテムが受注した仁川空港の磁気浮上式列車は、当初の開業予定から3年半遅れの現在も、まだ営業運転ができていない。技術的な問題が解決できなかったためだ。また、米コートハウスニュースによると、15年3月に米カリフォルニア州で発生した脱線事故をめぐり、米鉄道会社メトロリンクは現代ロテムが納入した列車の構造上の欠陥で、脱線する恐れがあると指摘した。 このほか14年2月には、ウクライナ鉄道庁が技術的な欠陥を理由に、現代ロテム社製の高速鉄道車両の運行を全面中止した。ほぼ独占状態にある韓国国内市場で、技術革新が進まない弊害が、車両の品質に表れているとの批判も、あながち的外れではない。
■高い給与水準に国民も反発
研究開発投資が減少する一方で、役員や従業員の給与は高い水準にある。14年の取締役の平均給与は7億3000万ウォン(約7500万円)に上る。現代ロテムが金融監督院に提出した四半期報告書によると、キム・スンタク最高経営責任者(CEO)の報酬は15年1~9月だけで約5億3600万ウォン(約5500万円)に上っており、業績が悪化している中でいぜん高い水準だ。 同様に鉄道部門の平均給与も毎年4~6%ずつ上昇し、平均年収も1億ウォン(約1000万円)に迫る水準にある。こうした実情が報じられると、韓国のインターネット掲示板では「あらゆる悪条件が集約された会社。破綻すべきだ」「税金の投入はうんざり」「政府支援の前に、まず自助努力するのが先だ」と厳しい声が相次いだ。 日中の鉄道車両大手との国際競争はますます激化する。大胆な構造改革がなければ、現代ロテムの再生はおぼつかない。
ZAKZAK (内田博文)
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160118/frn1601181556009-n1.htm
【管理人コメント】
現代ロテムは大韓民国において鉄道車両や軍用兵器等を生産している、現代-起亜自動車グループの企業である。 慶尚南道昌原市に鉄道車両を生産する工場がある。韓国の鉄道がたびたび話題になるが、車両の構造的問題点の指摘もあるわけで、そうでなくとも韓国の鉄道自体が駄目でしょう…。今頃の問題ではないはず…。
■工場長が悲鳴「存続の危機だ」
「韓国の鉄道車両産業は存続の危機にひんしている。政府の支援が必要だ」
15年11月、現代ロテム昌原工場長のチャン・ヒョンギョ専務は、現地記者との懇談で悲痛な声を上げた。中核事業だった鉄道部門は1~9月期も222億ウォン(約23億円)の営業赤字となった。深刻なのは海外からの鉄道受注額の減少だ。 現代ロテムは、1999年に現代自動車傘下の現代精工と大宇重工業、韓進重工業の鉄道車両事業部門を統合して発足した。財閥系大手の合併で、鉄道車両メーカーとしては韓国で独占的な地位を占める。政府の鉄道インフラ輸出推進策を追い風に、ピークの2012年には鉄道の海外受注だけで約1兆7000億ウォンの売上高を計上した。
しかし、鉄道の海外受注額は13年に1兆4000億ウォン、14年は6000億ウォンと急速に減少。今年1~9月期の海外受注額は800億ウォンにまで減少した。海外受注減少の要因として、現代ロテムが強調するのが、中国勢などとの受注競争の激化だ。チャン専務は「海外の受注が急激に減少した。中国や日本、米国、フランスは政府が海外鉄道の受注支援に乗り出しているのに、韓国では孤立無援だ」と嘆く。
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■半数がリストラ?
中国は昨年、中国北車と中国南車の二大車両メーカーを統合し、国営鉄道車両会社「中国中車」(CRRC)を発足。習近平国家主席のトップセールスなどにより、今年に入ってインドネシアの高速鉄道建設で日本に競り勝ったほか、米国ラスベガス-ロサンゼルスの高速鉄道事業などを相次いで受注した。 一方、日本も事業費約1兆8000億円のインド高速鉄道建設計画をめぐり、15年12月の日印首脳会談で新幹線方式の採用に合意した。巨費が動く大規模なインフラ建設の国際受注競争は、技術力や資金力など国力の差を端的に象徴する。 現代ロテムの受注残高は現在、国内外あわせて約4兆ウォン(約4100億円)で、受注が急速に回復しない場合、来年末には生産調整に追い込まれる恐れもある。「約8000人の現場従業員のうち、半数が職を失う恐れもある」と深刻な指摘もなされている。
■研究開発費減で技術革新進まず
ただ、現代ロテムの経営難は、一概に政府支援の不足だけが問題なのではない。朝鮮日報グループの経済専門メディア「朝鮮Biz」は、連載企画「現代ロテム墜落」を5回にわたって報じた。そこには「1%にも満たない研究開発費」「品質低下」「役員の高額年俸」など、競争力低下の原因となる同社の負の遺産が克明に描かれている。 特に、競争力の源泉となる製品開発において問題となるのが、研究開発投資の減少だ。朝鮮Bizによると、現代ロテムの売上高に占める研究開発費は10年に2%だったが、その後は14年を除いて毎年1%程度の低水準にとどまる。15年(1~9月期累計)はわずか0.7%にまで落ち込み、「技術革新を怠り、品質低下を招いた」と批判の声もあがっている。
実際、現代ロテムが受注した仁川空港の磁気浮上式列車は、当初の開業予定から3年半遅れの現在も、まだ営業運転ができていない。技術的な問題が解決できなかったためだ。また、米コートハウスニュースによると、15年3月に米カリフォルニア州で発生した脱線事故をめぐり、米鉄道会社メトロリンクは現代ロテムが納入した列車の構造上の欠陥で、脱線する恐れがあると指摘した。 このほか14年2月には、ウクライナ鉄道庁が技術的な欠陥を理由に、現代ロテム社製の高速鉄道車両の運行を全面中止した。ほぼ独占状態にある韓国国内市場で、技術革新が進まない弊害が、車両の品質に表れているとの批判も、あながち的外れではない。
■高い給与水準に国民も反発
研究開発投資が減少する一方で、役員や従業員の給与は高い水準にある。14年の取締役の平均給与は7億3000万ウォン(約7500万円)に上る。現代ロテムが金融監督院に提出した四半期報告書によると、キム・スンタク最高経営責任者(CEO)の報酬は15年1~9月だけで約5億3600万ウォン(約5500万円)に上っており、業績が悪化している中でいぜん高い水準だ。 同様に鉄道部門の平均給与も毎年4~6%ずつ上昇し、平均年収も1億ウォン(約1000万円)に迫る水準にある。こうした実情が報じられると、韓国のインターネット掲示板では「あらゆる悪条件が集約された会社。破綻すべきだ」「税金の投入はうんざり」「政府支援の前に、まず自助努力するのが先だ」と厳しい声が相次いだ。 日中の鉄道車両大手との国際競争はますます激化する。大胆な構造改革がなければ、現代ロテムの再生はおぼつかない。
ZAKZAK (内田博文)
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