北朝鮮めぐる中露の表と裏、韓国引き込んで国益確保狙う
北朝鮮問題に絡み、米国、中国、韓国、ロシア、日本などの動向が注目されているが、表面上の動きとは別にある裏の思惑について考えてみたい。 各国の「表」の動きは単純だ。米国、韓国、日本は建前として西側諸国なので、北朝鮮に非核化の圧力をかけて、それでも北朝鮮が屈服しないのであれば、軍事オプションも辞さないというものだ。
これまで、北朝鮮とは約30年にわたり対話を繰り返してきたが、その合意はほごにされ、結果として北朝鮮は核ミサイルを完成間近まで開発を進めている。対話路線でこのまま時間を無駄にすれば、北朝鮮の思うつぼという立場だ。 中国とロシアは、米国主導のこの方針に異を唱え、圧力をかけすぎるのはまずく、まずは条件を付けずに対話を開始すべきだとしている。
これに対し、「裏」の思惑は、当然のことながら公表資料がないので、国際政治のロジックによって推測して、明らかになった事実から妥当性を検証するしかない。 米国、ロシア、中国は国連安全保障理事会の常任理事国5カ国のうちの3つで、拒否権を有する超大国だ。 世界の安全保障では、核兵器の不拡散が大前提になっている。常任理事国はいずれも核保有国であり、米国、ロシア、中国も核不拡散は譲れない一線だ。核不拡散方針は、5つの常任理事国以外の核兵器の保有を禁止する核拡散防止条約(NPT)という形で、実効性が確保されている。
常任理事国以外にも、インド、パキスタン、イスラエルは核兵器を保有しているとされているが、これらの国はNPTに加盟していない。北朝鮮は、1993年と2003年にNPT脱退を表明して、06年以降、核実験を実施している。このまま、北朝鮮が核ミサイル開発を続ければ、NPT体制の崩壊にもつながりかねない。北朝鮮は、核ミサイルが完成すると中東のイランにも核ミサイルを輸出するという話もある。その場合、中東各国は対抗上、核ミサイルを持つようになるので、まさにNPT体制は無効化されてしまうだろう。
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ここで、ロシアと中国が、NPT体制を崩壊させるような北朝鮮の核を認めるかといえば、最終的にはノーであろう。しかし、そこに至るまでにいろいろな工作をして国益を確保すると考えられる。 ロシアと中国の国益としては、北朝鮮を西側国家に組み込めないようにすることだろう。つまり、韓国が米国に近いままでの南北統一は、仮に朝鮮半島の非核化があっても受け入れがたい。 特に、中国にとって北朝鮮は、緩衝国家の意味合いが強い。そこで、中国としては韓国を自国の支配下に置けば、北朝鮮は二の次になるだろう。 日米は、裏も表も同じような戦略であるが、中国とロシアは自国の利益から北朝鮮は二の次だ。 ちなみに韓国は、中国の影響を受ける一方、米国との関係もある。両方に配慮するので揺れ動くことになる。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
http://www.zakzak.co.jp/
ロシアは朝鮮半島が非核化すれば望ましいと思っているが、実際は北朝鮮のミサイルをそれほど懸念していない。ロシアは北朝鮮問題への唯一の解決策は北朝鮮と交渉し、金正恩政権の存続を保障することだとみている。北朝鮮の核開発に歯止めをかけることは支持するが、経済制裁には慎重で、体制転換には断固として反対する。その点がアメリカの思惑と異なり、国際的な取り組みを根本的に妨げる要因になっている。ロシアが対北朝鮮で融和政策を好む理由の1つは自国の利益のためだ。昨年5月に北朝鮮がロシア極東のウラジオストク方面へミサイルを発射したのと同じ週、北朝鮮はウラジオストク港との間に定期航路を新設した。
北朝鮮は国家として自給自足を目指す一方、ロシアとの間に驚くほど多くの経済的な結びつきを持っている。2国は石炭や石油製品を調達し合い、とりわけ燃料不足に悩む北朝鮮側に恩恵を与えている。正確な統計はないが、北朝鮮出身の多くの留学生や数千人の単純労働者がロシアに滞在し、特に極東地域に集中している。現状では2国間の経済協力の規模は小さいが、もしアメリカが北朝鮮への経済制裁を解除し北朝鮮が経済開放に舵を切れば、ロシアとの貿易が拡大すると期待する専門家もいる。
これまで、北朝鮮とは約30年にわたり対話を繰り返してきたが、その合意はほごにされ、結果として北朝鮮は核ミサイルを完成間近まで開発を進めている。対話路線でこのまま時間を無駄にすれば、北朝鮮の思うつぼという立場だ。 中国とロシアは、米国主導のこの方針に異を唱え、圧力をかけすぎるのはまずく、まずは条件を付けずに対話を開始すべきだとしている。
これに対し、「裏」の思惑は、当然のことながら公表資料がないので、国際政治のロジックによって推測して、明らかになった事実から妥当性を検証するしかない。 米国、ロシア、中国は国連安全保障理事会の常任理事国5カ国のうちの3つで、拒否権を有する超大国だ。 世界の安全保障では、核兵器の不拡散が大前提になっている。常任理事国はいずれも核保有国であり、米国、ロシア、中国も核不拡散は譲れない一線だ。核不拡散方針は、5つの常任理事国以外の核兵器の保有を禁止する核拡散防止条約(NPT)という形で、実効性が確保されている。
常任理事国以外にも、インド、パキスタン、イスラエルは核兵器を保有しているとされているが、これらの国はNPTに加盟していない。北朝鮮は、1993年と2003年にNPT脱退を表明して、06年以降、核実験を実施している。このまま、北朝鮮が核ミサイル開発を続ければ、NPT体制の崩壊にもつながりかねない。北朝鮮は、核ミサイルが完成すると中東のイランにも核ミサイルを輸出するという話もある。その場合、中東各国は対抗上、核ミサイルを持つようになるので、まさにNPT体制は無効化されてしまうだろう。
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ここで、ロシアと中国が、NPT体制を崩壊させるような北朝鮮の核を認めるかといえば、最終的にはノーであろう。しかし、そこに至るまでにいろいろな工作をして国益を確保すると考えられる。 ロシアと中国の国益としては、北朝鮮を西側国家に組み込めないようにすることだろう。つまり、韓国が米国に近いままでの南北統一は、仮に朝鮮半島の非核化があっても受け入れがたい。 特に、中国にとって北朝鮮は、緩衝国家の意味合いが強い。そこで、中国としては韓国を自国の支配下に置けば、北朝鮮は二の次になるだろう。 日米は、裏も表も同じような戦略であるが、中国とロシアは自国の利益から北朝鮮は二の次だ。 ちなみに韓国は、中国の影響を受ける一方、米国との関係もある。両方に配慮するので揺れ動くことになる。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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