米中鉄鋼戦争に巻き込まれる韓国
中国・北京で6日に開幕した米中戦略経済対話では、鉄鋼問題をめぐり、両国の財務閣僚による舌戦が繰り広げられた。ルー米財務長官は「中国の過剰生産が世界市場をねじ曲げ、害を及ぼしている」と主張した。中国の高虎城商務相は「世界的な鉄鋼供給過剰は世界の経済成長が鈍化し、需要不足で生じた問題だ。中国の鉄鋼生産で輸出が占める割合は他国に比べて低い」と反発した。
米国は先月、日本で開かれた伊勢志摩サミットで中国の鉄鋼過剰供給を批判する文言を首脳宣言に盛り込んだが、それに続く圧力と言える。米国が鉄鋼問題でこれほど中国を圧迫するのは雇用問題があるためだ。米国は160年の歴史を持つ自国の鉄鋼業界が中国の低価格の鉄鋼製品による影響を受け、生産量と雇用が急減しているとみている。米国鉄鋼協会(AISI)は、2000年から14年までの中国の鉄鋼生産は540%増加したが、米国は13%減少したとし、過去1年間に中国のせいで約1万5000人が働き口を失ったと主張している。
問題はこうした対立が韓国に飛び火する可能性が高い点だ。韓国鉄鋼業界関係者は「米国が中国製鉄鋼製品に対する制裁を発動すれば、韓国製品も抱き合わせにする可能性が高い」と述べた。米国と中国の通商戦争が過熱し、韓国が板挟みになる可能性が高まった格好だ。
■韓国、米中対立で板挟みに
米中の通商戦争は既に韓国に直接的な影響を与えている。米商務省は最近、中国製の耐食鋼に反ダンピング関税をかけると同時に、韓国製耐食鋼にも48%の反ダンピング関税をかけた。昨年韓国を対象として、4件の反ダンピング調査を開始した米国は、5月現在で3件を調査中だが、いずれも厚板、合金など鉄鋼関連製品だ。中国に生産拠点を移転して生産している韓国企業が反ダンピング提訴に巻き込まれるケースも増えている。
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専門家は韓国と中国が中間財を加工し、完成品を米国に売るという輸出構造が共通していることに注目している。韓国貿易協会のチェ・ハンジョン研究委員は「昨年韓国と中国の対米輸出上位10品目のうち、携帯電話、自動車部品、メモリー半導体、半導体部品の4品目が重複している。米国の対中制裁は韓国がいつ直面してもおかしくない問題だ」と指摘した。 米国の立場からみて、韓国は中国と同様、大幅は対米貿易黒字を計上している国でもある。米財務省は今年4月、韓国と中国を日本、ドイツ、台湾と同時に為替監視対象に含めた。
■米中の通商戦争、長期化か
一部には米国の対中制裁で韓国製品が米国市場で「漁夫の利」を得るとの期待もある。専門家はそれを「能天気な発想だ」と一蹴する。米国は最近、韓国に対する警戒心をあらわにしており、中国製品と同時に韓国製品も規制しようという動きが強まっている。 米国鉄鋼協会のトーマス・ギブソン会長は、4月に米商務省などが開いた公聴会で「超過生産された中国製鉄鋼が韓国で鋼管に加工され、米国にダンピング輸出されている」と主張した。米国が先月、ポスコ、現代製鉄などに最高48%の関税を適用したこともその延長線上にある。
ポスコ経営研究所にシム・サンヒョン上級研究委員は「韓国の鉄鋼メーカーは中国から安く輸入した熱延鋼板を加工し、冷延製品を米国に大量に輸出しており、中国に代わりダンピングの汚名を着せられる懸念があったが、その懸念が現実となっている」と指摘した。 問題は米中の通商戦争が今後長期化しそうな点だ。量的緩和以降、好転するかに見えた米国経済が相次いで異常シグナルを発し、米国も緊張モードに入った。3日に発表された米雇用統計が予想を大きく下回り、利上げが遅れるという観測が出ている。米国は通商分野でさらに攻勢をかけてくる可能性が高い状況だ。
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/06/08/2016060800758.html
【管理人 補足記事&コメント】
世界的な過剰生産で米国が中国の耐腐食性鋼に400%を超える関税爆弾を課した。韓国のポスコと現代製鉄や東国製鋼も関税の対象に含まれて、「流れ弾」に当たった。 米国が自国の鉄鋼市場を保護するために主要鉄鋼生産国に直撃弾を飛ばし、保護貿易主義に火が付く見通しだ。韓国の鉄鋼メーカーの対米輸出戦略にも支障は避けられない見通しだ。
米当局は現代製鉄とポスコにそれぞれ47.8%と31.7%の反ダンピング関税を課した。東国製鋼は8.75%になった。平均関税率は28.3%だ。これは当初、反ダンピング予備判定(最大3.5%)で受けた税率よりもはるかに高いレベルだ。今回の反ダンピング関税の直接のターゲットは中国だ。米商務部は対米輸出をおこなうほとんどの中国企業に、最大451%の反ダンピング関税を課した。米国通商代表部(USTR)と商務部は昨年、全世界の鉄鋼生産過剰量(7億トン)のうち、4億3000トンが中国で生産されたものと見ている。
耐腐食性鋼の輸出量が多い韓国も被害が予想される。 26日、韓国鉄鋼協会によると昨年、韓国の耐腐食性鋼の対米輸出量は59万4000トンで、中国(70万5600トン)と台湾(60万3200トン)に次いで3番目に多い。耐腐食性鋼は現代製鉄と東国製鋼がそれぞれ10万トン前後を輸出しており、ポスコは5万トンを輸出していると伝えられた。輸出額は5億907万ドルで、台湾(5億3441万ドル)の次に大きい。
ただでさえ業況不振から内部供給過剰の事態を迎え、経営難に苦しむ韓国企業に関税の負担が加重されたわけだ。一方で、鉄鋼業界の関係者は、「中国産が450%を超える反ダンピング関税を迎え、事実上は禁輸措置が下された」とし、「中国発の低価格物量攻勢が少なくなり、韓国製品に競争力が生じる可能性も排除できない」という楽観的な見方もある…。
米国は先月、日本で開かれた伊勢志摩サミットで中国の鉄鋼過剰供給を批判する文言を首脳宣言に盛り込んだが、それに続く圧力と言える。米国が鉄鋼問題でこれほど中国を圧迫するのは雇用問題があるためだ。米国は160年の歴史を持つ自国の鉄鋼業界が中国の低価格の鉄鋼製品による影響を受け、生産量と雇用が急減しているとみている。米国鉄鋼協会(AISI)は、2000年から14年までの中国の鉄鋼生産は540%増加したが、米国は13%減少したとし、過去1年間に中国のせいで約1万5000人が働き口を失ったと主張している。
問題はこうした対立が韓国に飛び火する可能性が高い点だ。韓国鉄鋼業界関係者は「米国が中国製鉄鋼製品に対する制裁を発動すれば、韓国製品も抱き合わせにする可能性が高い」と述べた。米国と中国の通商戦争が過熱し、韓国が板挟みになる可能性が高まった格好だ。
■韓国、米中対立で板挟みに
米中の通商戦争は既に韓国に直接的な影響を与えている。米商務省は最近、中国製の耐食鋼に反ダンピング関税をかけると同時に、韓国製耐食鋼にも48%の反ダンピング関税をかけた。昨年韓国を対象として、4件の反ダンピング調査を開始した米国は、5月現在で3件を調査中だが、いずれも厚板、合金など鉄鋼関連製品だ。中国に生産拠点を移転して生産している韓国企業が反ダンピング提訴に巻き込まれるケースも増えている。
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専門家は韓国と中国が中間財を加工し、完成品を米国に売るという輸出構造が共通していることに注目している。韓国貿易協会のチェ・ハンジョン研究委員は「昨年韓国と中国の対米輸出上位10品目のうち、携帯電話、自動車部品、メモリー半導体、半導体部品の4品目が重複している。米国の対中制裁は韓国がいつ直面してもおかしくない問題だ」と指摘した。 米国の立場からみて、韓国は中国と同様、大幅は対米貿易黒字を計上している国でもある。米財務省は今年4月、韓国と中国を日本、ドイツ、台湾と同時に為替監視対象に含めた。
■米中の通商戦争、長期化か
一部には米国の対中制裁で韓国製品が米国市場で「漁夫の利」を得るとの期待もある。専門家はそれを「能天気な発想だ」と一蹴する。米国は最近、韓国に対する警戒心をあらわにしており、中国製品と同時に韓国製品も規制しようという動きが強まっている。 米国鉄鋼協会のトーマス・ギブソン会長は、4月に米商務省などが開いた公聴会で「超過生産された中国製鉄鋼が韓国で鋼管に加工され、米国にダンピング輸出されている」と主張した。米国が先月、ポスコ、現代製鉄などに最高48%の関税を適用したこともその延長線上にある。
ポスコ経営研究所にシム・サンヒョン上級研究委員は「韓国の鉄鋼メーカーは中国から安く輸入した熱延鋼板を加工し、冷延製品を米国に大量に輸出しており、中国に代わりダンピングの汚名を着せられる懸念があったが、その懸念が現実となっている」と指摘した。 問題は米中の通商戦争が今後長期化しそうな点だ。量的緩和以降、好転するかに見えた米国経済が相次いで異常シグナルを発し、米国も緊張モードに入った。3日に発表された米雇用統計が予想を大きく下回り、利上げが遅れるという観測が出ている。米国は通商分野でさらに攻勢をかけてくる可能性が高い状況だ。
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/06/08/2016060800758.html
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世界的な過剰生産で米国が中国の耐腐食性鋼に400%を超える関税爆弾を課した。韓国のポスコと現代製鉄や東国製鋼も関税の対象に含まれて、「流れ弾」に当たった。 米国が自国の鉄鋼市場を保護するために主要鉄鋼生産国に直撃弾を飛ばし、保護貿易主義に火が付く見通しだ。韓国の鉄鋼メーカーの対米輸出戦略にも支障は避けられない見通しだ。
米当局は現代製鉄とポスコにそれぞれ47.8%と31.7%の反ダンピング関税を課した。東国製鋼は8.75%になった。平均関税率は28.3%だ。これは当初、反ダンピング予備判定(最大3.5%)で受けた税率よりもはるかに高いレベルだ。今回の反ダンピング関税の直接のターゲットは中国だ。米商務部は対米輸出をおこなうほとんどの中国企業に、最大451%の反ダンピング関税を課した。米国通商代表部(USTR)と商務部は昨年、全世界の鉄鋼生産過剰量(7億トン)のうち、4億3000トンが中国で生産されたものと見ている。
耐腐食性鋼の輸出量が多い韓国も被害が予想される。 26日、韓国鉄鋼協会によると昨年、韓国の耐腐食性鋼の対米輸出量は59万4000トンで、中国(70万5600トン)と台湾(60万3200トン)に次いで3番目に多い。耐腐食性鋼は現代製鉄と東国製鋼がそれぞれ10万トン前後を輸出しており、ポスコは5万トンを輸出していると伝えられた。輸出額は5億907万ドルで、台湾(5億3441万ドル)の次に大きい。
ただでさえ業況不振から内部供給過剰の事態を迎え、経営難に苦しむ韓国企業に関税の負担が加重されたわけだ。一方で、鉄鋼業界の関係者は、「中国産が450%を超える反ダンピング関税を迎え、事実上は禁輸措置が下された」とし、「中国発の低価格物量攻勢が少なくなり、韓国製品に競争力が生じる可能性も排除できない」という楽観的な見方もある…。
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